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手を伸ばせば・・・ (3)

ラストです(^_^)

短めです。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 ――――何であんな事口走ってしまったんだか。



 電車を降り、自宅まで続く緩やかな坂を上りながら直樹は考えた。
 




 『アンタが入り込んでくる隙なんて欠片もないんだよ。琴子をからかえるのもおれの特権だ。』

 『だから琴子に近づくな。』




 何処の誰の口が言ったんだか。
 自分の口から出た台詞とは思えない。

 トモヤから引き離す為とはいえ他にも言葉があったと思う。
 間違ったことは言っていない。
 琴子と同居しているし、琴子は直樹一筋で琴子が起こす騒動にもれなく巻き込まれている。
 だから今日の出来事もいつもの延長上にあって、同居しているが故に変な情が沸いただけだと思った。
 
 けれど、琴子がトモヤの腕の中に収まってしまった時は自分でも理解できない何かドス黒いものが身体から吹きだした気がした。
 泣きそうな顔で助けてと言わんばかりのあの顔が頭にこびりついて離れなかった。


 そんなことを思いながら歩き続けていると下の方から直樹を呼ぶ声が聞こえてきた気がした。
 それは現実に呼ばれていて。


 「入江くん・・・ごめんね、ちょっと痛い・・・。」

 
 声がする方を見れば琴子がはぁはぁと息を切らしながら涙目で直樹を見上げていた。

 
 「腕が、痛いの・・・。」


 腕・・・?
 直樹は琴子の腕に目を落とすと、そこにはしっかり直樹の大きな手に捕まえられている琴子の腕があった。
 トモヤから引き離し、改札を抜けてからずっと離すことなく握り続けていたらしい。
 「悪い。」と一言呟くと直樹は手を離した。

 よく見ると直樹が掴んでいた手首が赤くなっている。
 細く白い琴子の腕だけにその赤さが際だっている気がする。
 気付かなかったとはいえここまで腕を取り歩き続けてきた自分に驚いていた。

 (ったく、何なんだよ一体。)

 学校を出てから今まで理解できないことだらけで直樹は苛ついて仕方がなかった。




 「ごめんね、入江くん。その、怒ってるよね・・・?」

 
 そんなことを考えながら歩いていると後方から琴子の声が聞こえた。
 隣を歩いていると思ったが琴子は数メートル後ろで止まり、直樹を見つめていた。

 
 「何が。」

 「また、面倒なことに巻き込んじゃって。今日は入江くん何にも関係なかったのに・・・。」

 「・・・。」


 そう言って俯く琴子。
 きっとさっきから苛ついている理由は自分にあるのだろうと思っているのだろう。
 琴子はごめんなさい・・・と謝った。
 琴子の後ろには沈みかけている夕日があって逆光で琴子が今どんな表情をしているのか分からない。
 けれど、声を聞く限りでは元気じゃないことは分かる。

 
 「何を今更。」

 
 直樹は琴子の前まで行くとそう告げた。
 その声は呆れてはいるものの落ち着いていて怒り口調ではなかった。
 
 『いい加減にしろよ!これ以上おれを巻き込むな!!』
 
 それくらい言われても仕方がないと琴子は覚悟していた。
 きっとそう言われてまた泣いてしまうだろう自分が嫌で仕方がない。
 けれど、直樹の声はそれにほど遠くて・・・。


 「・・・怒ってないの?」

 「だから今更だって言ってんだろうが、おまえがおれに迷惑かけなかった日が何時あるんだよ。そういうことはもっと早く気付いて欲しかったね。」

 「・・・あたしね、入江くんにこれ以上迷惑かけれないから自分で何とかしようと思って、それにこんな所入江くんに見られたくなかったし。でも・・・でもね入江くんの顔を見たらあたし・・・。」


 琴子は俯いてそれからの言葉が出てこない。

  
 「無事だったんだから良かったんじゃねぇの?おまえの友達にもちゃんと礼言っておけよ。」


 直樹はポンっと琴子の頭を撫でた。
 その手はとっても温かくてそして優しい。


 「ありがとう、入江くん。」

 
 琴子は零れそうになる涙をぐいっと拭くと顔を上げ直樹に笑顔を向けた。
 涙目ではあるけれどいつもの笑顔がそこにはある。
 


 「あとね、あの聞いてもいい?」


 自分からそう言っておきながらとても言いづらそうにしている琴子に「早く言えよっ」と言いそうになるのをぐっと飲み込んで直樹は次に出てくる言葉を待った。


 「あたしが入江くんを好きなのってまだ迷惑かな・・・。」

 「・・・。」


 何時の話をしているのだろうと直樹は考えると直ぐに記憶が戻ってきた。
 きっと同居が全校にバラされたときの話をしているのだろう。
 あの時の琴子は直樹が行った台詞に酷く傷つき、そして大粒の涙を流していた。
 いつも明るく、直樹の意地悪にも堪えることなく笑っていた琴子がポロポロ涙をこぼしたあの日は直樹の記憶に鮮明に残っていることでもある。
 直樹ははぁっと溜め息を零すと琴子に問う。


 「おれがやめてくれって言ったらおまえは素直に聞き入れてくれるのか?」

 「・・・ううん。あたし、入江くんがこれからもずっと好きだと思う。」


 琴子は直樹の質問に顔を横に振った。
 

 「だったらそんなこと聞いてくるな。出来もしない事気にするなんてお前らしくもない。」
 
 「え?」

 
 直樹は琴子に告げると立ち止まっている琴子を置いて家まで歩き出した。
 「ま、まって!」琴子も直樹に置いて行かれないように歩き出す。
 
 
 「入江くん、それってまだ好きでいても良いの?」

 「どっちかというと迷惑な方に入るんじゃねぇの。」

 「えぇ?!で、でも思ってるだけなら迷惑じゃないよね?」

 「おまえ・・・さっきの謙虚さは何処へ置いていったんだ?」
 
 「だって、今日の入江くんすっごく格好良くってますます好きになっちゃったんだもん~。」

 「もうおれに聞くなっ 勝手にしろ!」

 「うん、勝手にする。」


   
 
 



 坂を登っている間に二人の距離は伸びたり縮んだり。
 その距離が長くなったとしても、直樹が望まなくても琴子は必ず直樹の傍に帰ってくる。
 きっと直樹が手を伸ばすことがあるとするならば、琴子は満面の笑みで伸ばしてくるだろう。
 けれど今の直樹は立ち止まって振り返って琴子が来るのをただ待っているだけ。

 きっと前ならこうやって待つこともしなかっただろう。
 でも今は出会った春よりも確実に距離が縮んでいるのは間違いない。


 はぁはぁと息を切らしながら琴子は直樹の元へ駆け寄る。
 とっても幸せそうな顔をして。

 
 「えへへ・・・入江くんと一緒に帰れるのって楽しいね♪」

 「おれは全く思わないけど?」

 
 背中から差す夕日で前方に伸びる細く長い影――――。
 並んで歩く二人の距離は手を伸ばせば繋がる短い距離。
 けれど二人の影はしっかりと手を繋いでいるように見えた。









 「入江くん、だーいすき」 

 「おれも――――。」









 そんな風に会話する二人はそんなに遠くない未来かも知れない――――。


  
                           《END》



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 自分の行動に疑問を持ちながらもやっぱり無自覚な入江くんでした~。
 もはやここまで来ると国宝ものかもしれません・・・。



 
 あっ!今日ってハロウィンでしたね。
 とりあえずこのお話を仕上げなきゃと思っていたのですっっっかり忘れていました・・・(T_T)
 
 七夕といいハロウィンといい、スパッと忘れてしまってどうもスミマセンm(_ _)m

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非公開コメント

凄く素敵です!

もお無自覚な入江君の態度って周りから見たら バレバレじゃあないですか!
気づかないのは 琴子だけ(^_^)
健気な琴子に 読んでて涙が出てきました。人を思う気持ちの純粋さ
他校の子が認める可愛さに 早く気付けよ直樹! この二人のピュアさに 座布団あげちゃいます。また楽しみにしてます!

鈍感バカップル♥

トモヤにすらバカップル扱いされてるのに・・・まだしばらくはこの曖昧な関係が続くのですね♪青くて甘くて悶えちゃいます♥narackさんのこの心の琴線にふれてくるようなお話大好きです!!

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紀子ママさま。

こんにちは♪

 拍手コメントありがとうございます☆

 国宝を超えて世界遺産登録・・・(笑)
 いや、珍百景かもしれないですね(^_^;)
 自分以外の男がまだ触ったことのない琴子ちゃんの腰に手を回したんですからそりゃもうご立腹です。けれど恋と気付かない・・・まさに珍百景(笑)
 今回というかいつもなんですがイマイチ意地悪になりきれない我が家の入江くんですが青さは伝わった様なので安心しました~♪
 そんな青い入江くんに萌えていただいて感激でございます♪
 
 

ちぇるしいさま。

こんにちは♪

 拍手コメントありがとうございます☆

 今回の入江くん意地悪で青い入江くんでしたか~?
 更新した後にちょっと優しい入江くん過ぎたかなって思ったんです~(=入江くんではなくなっている←今更か?)
 でもちぇるしいさんのコメントを読ませていただいてホッとしました♪
 ありがとうございます♪

 そして、例のも見つけてくださったんですね~(>_<)(感涙)
 たまにで結構ですので覗いてやってくださいね(*^_^*)

shinochanさま。

こんにちは♪

 拍手コメントありがとうございます☆

 無自覚なバカップル話にほっこり、そう言って頂けて嬉しいです(*^_^*)ありがとうございます♪
 真面目な話も爆笑するようなお話も書けませんがマイペースで書かせて頂きますので~♪
 また遊びに来てくださいまし(*^_^*)

Re: さくらこさま。

こんにちは♪

 コメントありがとうございます☆

 当事者のだけが気付いていないというミラクル(笑)
 数分話したトモヤでさえバカップルって気付いたのにこの鈍感さ・・・。
 そして琴子ちゃんの心優しい可愛いところも気付きなよ!!という入江くんへの突っこみ!しっかりと受け止めました!!
 でも青い入江くん書くのは結構好きなのでまた書いたときにはよろしくお願いいたします~♪

Re: もりくまさま。

こんにちは♪

 コメントありがとうございます☆

 まぁ!なんて素敵なお言葉をくださるんでしょう(>_<)!!
 我が家の入江くんは甘めなのですがそんな入江くんの青さに悶えてくださって(*^_^*)
 高校時代はこのバカップルで通り過ぎますよ~。
 端からみればれっきとしたバカップルではあるんですけれどね、本当この無自覚ぶりには人間国宝もんです(^_^;)
 青いバカップルを書くのは結構好きなので、書いた際にはよろしくお願いします~♪

Re: miyacoさま。

こんにちは♪

 コメントありがとうございます☆

 誰よりも2人のバカップル振りを見抜いていたと思われるママ。
 妄想で騒いでいるんじゃないんですよね(^_^)
 愛想悪い息子でも愛する息子ですから何でもお見通しってことですかねぇ。
 
 入江くんも無自覚だけれど琴子ちゃんが自分に一途であることは分かっているから絶対に自分意外に靡くことはないという自信がありますよね。
 だからこういう態度を取るんだと思いますが、今のうちに気が済むまでしていなよ、そのうち焦るのは君だから・・・なんて思いながら書いてた私は鬼でしょうか(笑)
 
 そしてテンプレも・・・入江くんではないですが無意識って本当に怖いですよね(笑)

Re: chan-BBさま。

こんにちは♪

 コメントありがとうございます☆

 無自覚ですけれど入江くんの心にはしっかりと入り込んでいる琴子ちゃん。
 入江くんの歪んだ心が琴子ちゃんのピュアに浄化されていくような・・・(笑)
 ほんと、琴子ちゃんは女神様ですね♪

 そしてラストにも気付いてくださってありがとうございます♪
 夕日に伸びた影が一歩先にある2人の未来を表しているという感じに書いてみたくて(^_^;)
 あと11月というのもあって夕日=秋という無理矢理のこじつけ(笑)

 そうですよ~11月は大事な月ですから素敵なお話を書きたいのになっかなか脳みそが働かず(>_<)
 chan-BBさんの様な素敵なお話を描いてみたいです~(>_<)
 

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Re: 藤夏さま。

こんにちは♪

 コメントありがとうございます♪そしてお返事遅くなってしまって申し訳ありません(汗)
 
 3話読んで下さったんですか?長かったでしょう??ありがとうございます☆
 我が家の入江くんはもう無自覚すぎる男で、普通ここまでしてたら気付く筈なのに気付かない・・・。
 素晴らしくスーパー無自覚ツンデレ戦士です☆
 でもちゃんと琴子ちゃんを守る任務は遂行しますので(^_^)
 ・・・ですよね琴子ちゃんがプロポーズされるまで気付かないって凄い無自覚ですよね・・・。
 ギリギリでも気付いて良かったよ・・・入江くん(>_<)
 青い春!!確かに良いですね~(*^_^*)
 無自覚時代は書いてて楽しいですので、またお話が出来たときには更新しますね(^_^)
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