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Ring

恋人期間にあたるお話です。



――もうすぐ結婚式――


 
 あたしは結婚式の打ち合わせを終えた後、おばさんと別れて一人で街を歩いている。
 今日はあたしにとって特別な日。

 
 入江くんの誕生日。


 結婚式が急過ぎて一瞬吹っ飛びそうになっちゃったけど・・・。

 何かプレゼントを・・・って思っていたけれど、忙しくって今日まで買えずにいた。

 いろいろ悩んだ結果、選んだのは万年筆。
 どの候補より値が張っちゃったけど、この万年筆を使っている入江くんを想像したらこれ以外考えられなくなってしまった。
 あたしと違って、硬い、神経質そうな入江くんの字にはピッタリだとも思った。


 11月に入れば街の雰囲気がX'masへと変わり始める。
 赤、緑のX'masカラーと、夜にはイルミネーション。
 X'masになる頃には入江くんのお嫁さんになっているんだと思うと胸が少し高鳴った。

 街のショーウインドウを見ると、一つだけX'masカラーからかけ離れたお店に気づく。
 近づいてみるとそこはウエディングドレスのお店。


 「わぁ・・・キレイ!」


 いろんな色のドレスがあるけれど、やっぱり一番目を惹くのは純白のウエディングドレス。
 多方向からのライトでスパンコールやクリスタルがいろんな輝きを放っている。

 今日の打ち合わせはドレスだった。
 本当は入江くんと選んでみたかったな・・・と思ったけれど、入江くんの仕事の忙しさを考えたら何も言えなかった。


 ―――あたしがそうさせてしまっているようで―――。


 ドレスの試着中、あたしが考えていると、
『琴子ちゃんに一番似合うドレスを選んでカタブツお兄ちゃんに「キレイ だ」って言わせちゃいましょうね。』
とおばさんが笑って言ってくれた。

 ショーウインドウのドレスは大人っぽくて、セクシーであたしが選んだドレスとは違うけれど、入江くん。びっくりしてくれるかな?
 「馬子にも衣装」とか言って、フンッて鼻で笑われたりするのかしら・・・。

 しばらくドレスを見つめた後、あたしはまた歩き出した。




 「琴子!」

 「え?」


 声のする方を見れば、入江くんが車から顔を出していた。
 専属の運転手さんに話をしたあと、入江くんは車から降りてきた。

 あたしに向かって歩いてくる入江くんは・・・スーツ姿で堪らなくカッコイイ。


 「良かった。探してたんだ。」

 「え?あたしを?」


 どうしたんだろう・・・と首を傾げていると入江くんはフッと笑った。


 「何か大切なこと忘れてる・・・お前。」


 大切なこと、大切なこと・・・ 今日は11月12日で・・・。 

 
 「ああ!! 入江くんの誕生日でしょう?」

 「は? ああ・・・そういえばそうだったな。」


 答えは違ったみたいだったけれど、あたしはさっき買ったばかりのプレゼントを鞄から出して入江くんに渡した。


 「なに?」

 「あの、これ誕生日プレゼント。本当はお家で渡したかったんだけど、最近入江くんにあんまり会えないし、次いつ顔見られるか分かんないから。入江くん!お誕生日おめでとう。」

 「ふ~ん。開けていいか?」


 そう言うと入江くんは街の中でガサガサとプレゼントを開ける。
 きれいにラッピングしてある包みを破らないように剥がし、きれいにたたんでポケットにしまった。

 包みを取ってるだけなのに無駄のない仕草・・・。やっぱり入江くんはカッコイイ!!

 なんて見とれていると、入江くんは眉間に皺を寄せてあたしを見た。


 「琴子、お前これ。高かったんじゃないのか?」

 「え?入江くん この万年筆知ってるの?」

 「このブランドは有名だからな。・・・大丈夫だったのか?」

 「うん。他のも見てみたけど、これが一番入江くんにしっくりきちゃって。 会社で書類にサインしてる入江くんも、お医者様になった時の入江くんにもピッタリだと思ったの。」


 そんな入江くんを想像しつつ力説したら、入江くんはフッと笑った。
 目を細めて笑う入江くんにあたしもつられて えへへ と笑う。

 
 「じゃあ、遠慮なく使わせてもらう。 サンキュな。」


 そう言って入江くんはピカピカの万年筆を胸ポケットに挿してくれた。
 うん。やっぱり似合ってる。フンパツして買って良かった!


 「その袋は?」


 入江くんはあたしが持っているちょっと大きめの紙袋を指した。
 あたしは入江くんにその中身を見せる。

 
 「花?俺にか?」

 「ううん。これは おばさんに。」

 「お袋に?」


 花は花でも、生花のアレンジメントフラワーじゃなくってプリザーブドフラワー。
 特殊な加工をしてあるからずっとこのまま枯れないんだよ。って言ったら ふ~ん ってあんまり興味なさそう。
 まあ・・・男の人はお花に興味ないかも。


 「あのね。今日入江くんのプレゼント選んでいろいろ考えてたら、おばさんにも何かお礼をしたくなっちゃって。 
 だって、おばさんが入江くんを産んでくれなかったら、どんなに頑張っても入江くんに出逢わなかったし、好きにもなれなかったもの。
 それで探してたらこれ見つけて。 一生枯れないお花、素敵だなって。」

 「琴子。」

 「入江くんのお誕生日は、入江くん生まれてきてくれてありがとう。と、おばさんに入江くんを産んでくれてありがとう。の日だよ。」

 
 そう言うと、入江くんはあたしの髪を優しく梳いて小さな声で「お前ってすごいな。」って言ってくれた。
 入江くんにこんなふうに優しくされることなんてあまりなかったからドキドキしちゃう。

 そして、入江くんはあたしのドキドキに輪をかけるかの様にあたしの両手をぎゅって握ってきた。
 あたしは、パッと入江くんを見上げた。


 「さっきの続き。お前、大切な事思い出したか?」

 「え? あ・・・ううん。」


 あたしがブンブンと頭を横に振ると、入江くんは小さな溜め息をつく。


 「ったく。人の事はこんなに尽くせるのに、自分の事はどうでもいいんだな。」


 そう言うと入江くんは、あたしの左手の薬指をそっとなぞった。

 あっ・・・ とあたしはようやく気づく。


 「そういう事。おれ、今日はもう仕事キリついたから選びに行くぞ。」


 入江くんは、あたしの荷物を持って、そしてあたしの手をぎゅっと握った。
 夕方になると、寒さも増してくるから入江くんの手から温かさがじんわりと広がっていく。


 「あっ おばさんに電話しなきゃ。きっと心配するよ。」

 「もうしておいた。」

 「え? いつ?」

 「・・・ヒミツ。」


 ついでに飯も食って帰るか・・・。って言う入江くん。
 本当は今日早く帰るのだって大変だったんでしょう?
 昨日まで寝る時間も惜しんで仕事してたのに。

 入江くんのこんな優しさがとっても嬉しい。 幸せ。

  
 「入江くん、ありがとう。」

 「いや・・・ありがとうはおれの方だけど。」


 入江くんと目があう。
 入江くんの目は優しい。
  色素が薄くて、澄んでて、そして力強い希望に溢れてる。


 「入江くん、大好きだよ。これからもずっと、大好き。」

 「知ってるよ、十分に。」


 陽が落ちて夜の影が広がり始めた頃、街路樹のイルミネーションが一斉に輝き始める。


 「きゃ~! キレイ!! 入江くん、すごいね!」

 「・・・だな。」


 大好きな入江くんと、入江くんの誕生日に見るイルミネーションは最高にキレイ。


 「ほら・・・早く行くぞ。」

 「うん。」


 遠くまで続く光はこれからのあたし達をお祝いしてくれてるみたい。

 結婚したからって毎日楽しいことばかりじゃない。
 どっちかといえば苦しい方が多いはず。

 けれど、入江くんが隣に居てくれるだけであたしは前を向いていけるんだよ。


 入江くんと歩く道はまだスタートラインにすらたどり着いていない気がする。
 今、あたし達はそこに向かって歩いてる途中。


 
 あたしは―――入江くんと幸せになるんだ―――。

                                《END》

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