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王子の社交界デビュー -5-

5話目です(^_^)




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  


 「琴子。」


 そう呼ぶ直樹の声は酷く冷たいもの。
 直樹をあまり知らない人間でさえ今の直樹の感情が手に取るように分かる。
 なので当然ここに居る人間で誰よりも直樹を知る琴子は直樹の表情に身体が震えた。
 けれど琴子は安田から離れることなく泣きながらブンブンと頭を横に振るばかりだった。
 そんな姿を見て安田は琴子を優しく宥める。


 「ほれ琴子さん、入江先生が呼んではるよ。返事したらな。」

 「や・・・入江くん、キライ~!!」

 「こ、琴子さんっ!なんちゅう事を!!思ってもないことゆうたらアカンで。」

 「意地悪な入江くんも怖い入江くんもキライだもん~~~!!」

 
 うぅ~~・・・ 琴子はただ泣くばかりだった。
 直樹の冷たい態度。それはとても寂しいけれど、考えてみればいつもの変わらない態度。
 それに比べてあたしは何やってるんだろう・・・と情けなくなる。
 いろいろ自分なりに頑張ってみたけれど結局上手くいかなかった。
 「入江先生の奥さんは素敵ですね。」って言われたい。
 そう思って頑張っても結果はいつもこう。
 東京ならまだしもここは神戸。
 ここに来てまで何やってるんだろうと、自分が情けなくて仕方ない。
 しかも直樹に迷惑をかけている。
 寂しいよりも情けないと思う涙がこぼれ落ちる。

 泣いて更に顔を真っ赤にさせている琴子に離れて飲んでいる同僚達も何事かと視線を送る。
 途中から気づいた人にとっては直樹ではなく安田に抱きついている琴子にイマイチ状況が掴めなかった。


 「琴子!」

 
 一段と厳しい口調で妻を呼ぶ直樹に更に空気が張りつめる。
 それに怯えた琴子はビクっと身体を強張らせ、そっと安田から離れた。


 「おれに食いモン取り分けて。」

 
 何を言うかと思えば、怒ることもなく目の前にある料理を取り分けろと言う。
 手を伸ばせば簡単に届くし、何よりも直樹の皿には看護婦達が取り分けた料理が綺麗に並べてある。
 琴子がそこに置く場所なんて無いくらいにぎっしりと。


 「・・・そのお皿、いっぱいだもん。」

 「あぁ、そうだな。」

 
 直樹は自分の皿を手に取ると空になった大皿に捨てるようにぶちまけた。
 センス良く並べてあった料理がぐちゃぐちゃな山を作る。
 自分が並べた料理が無惨な姿に変わったのを見て看護婦はさぁ・・・と青ざめた。
 琴子もまたその光景に目を見開く。

 
 「入江く・・・」

 「ほら、空になった。取り分けて。」


 琴子はグス・・・と鼻を鳴らしながら皿を受け取ると震える手に力を込めて料理を並べる。
 看護婦の様に上手に並べることは出来ない。
 そんな自分がやっぱり情けなくてじわりと涙が出る。
 けれど、料理に涙が入るといけないので琴子はグッと堪えた。


 「はい・・・どうぞ。」

 「食わして。」

 「え?」


 ざわ・・・と周りがどよめく。
 人前で堂々と食べさせろなんて。
 しかもその台詞を吐いた男が直樹である。
 もともと羞恥心なんて持ち合わせていない直樹だが、そんな性格なんてここにいる人は知るよしもないのだ。

 
 「じ、自分で・・・」

 「食わして。」


 琴子が言い終わる前にたたみ掛ける直樹。
 こうなっては直樹に従うしかない琴子は皿にある唐揚げを取ると直樹の口に放り込んだ。

 
 「うん・・・旨い。」

 「・・・。」


 我慢してた涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。
 怒ってたんじゃないの?と思わせた顔は身を潜めて今の顔は穏やかだった。
 特に目が・・・。
 何も言えずにただ俯いて涙を流す琴子を見据えながら直樹は琴子の飲みかけのサワーを取ると一口飲む。
 そして琴子の涙でぐしゃぐしゃの顔を両手で掴み自分に近づけた。

 
 「いりぇ・・・んっ!」


 きゃあぁぁぁ!! という黄色い雄叫びの中に うぉぉぉぉ!! という野太い声が混ざり、それが部屋中に響く。
 遠くで事の流れを冷静に見つめていた東山が盛大にビールを吹いた。
 こ、これがあの時の再現か!とおしぼりで濡れた服を拭きつつも遠くのキスを食い入るように見る。


 「やぁ!! 入江くんっやめ・・・」

 「消毒・・・」

 「ちが・・・消毒はおで・・・こ・・・」

 「いいや、ここで合ってる。」


 直樹はまたサワーを口に含むと唇を合わせた。
 こくん・・・と琴子の喉が鳴るとそこに流れきれなかった甘い水が唇の端から首を伝う。
 直樹はそれすら零すことを許さず指で拭うとぺろりと舐め上げた。
 口の中にはもう水分なんて無く、あるのはお互いの唾液のみ。
 リアルで艶めかしい水音をわざと立てて直樹は口内を味わった。




 「「・・・。」」




 いきなりのキスシーンが始まりそれが終わると室内に静寂が訪れる。
 呼吸することさえ忘れているように時間が止まってしまったかのよう。
 そんな静寂を破ったのはこの静寂を作った直樹だった。

 
 「安田先生。」

 「ひ・・・は、はははいっ」

 「ビール。」

 「・・・はい?」

 「新しく頼んでください。」

 「へ?」
 

 力を無くしくったりとしている琴子を胸にぎゅっと抱きながら直樹は安田のジョッキを指さす。
 安田のジョッキを見ると飲み始めでたくさんあったビールが半分しかない。
 何故かってそれは酔って癇癪起こした琴子が飲んでしまったからなのだが。
 

 「琴子が飲んでしまったようです。新しく頼んでください。」

 「あぁ、別に俺は気にせん・・・」

 「コイツの馬鹿が移りますから。」

 「・・・・・・そやな、そうさせてもらうわ。」

 「賢明です。」


 またそういう事を言う・・・。
 琴子をはじめ、この空間にいる人全員が思っただろう。
 琴子が飲んだジョッキを飲んで欲しくない、そういうことだろう?・・・と。
 尤も勝手に安田のビールを飲んで間接キスをしたのは琴子の方だけれど。
 それなのに消毒といってアルコール消毒するなんて・・・。
 どんだけ独占欲強いねん!! と、ツッコミたくなるが誰もツッコむ勇気などない。

 またみんなの前で馬鹿呼ばわりされた琴子が直樹の胸の中で口を尖らせている。
 直樹はそんな琴子の前髪をかき上げると丸い額を露わにさせた。
 その丸い額に浮き上がる赤いvサイン。そこにちゅっとキスを落とす。

 
 「消毒。」

 「い、入江くぅん・・・。」

 「あぁ、悪い、俺のこと嫌いになったんだったな。」

 「・・・。」

 「俺よりそっちの尚輝がいいんだろう?」


 直樹はあごを突き出してもう一人のなおき、『安田尚輝』を指す。
 指された安田は滅相もないとブンブンと顔と手を振って否定している。


 「・・・入江くんがいいの。」

 「おれはどっちのなおきがいいか聞いてんの。」

 「・・・こっちの直樹が好きなの。」

 
 琴子は直樹の身体にぎゅうと抱きついた。
 直樹もまた膝に抱え上げている琴子をぎゅっと引き寄せる。

 「つーか知ってるよ。でも、おまえも随分大胆になったもんだよな~。」

 「・・・へ?」

 「見られてるぜ?」


 耳元で囁かれて周りを見渡せば真っ赤な顔をしている同僚と、真っ青な顔をしている同僚がいる。
 誰がどっちの色をしているのかは想像に任せるとして・・・。

 
 「っいやぁぁぁぁぁ!!!////」

 
 琴子は噴火寸前の真っ赤な顔で直樹の胸に顔を埋めた。
 穴があったら入りたい。
 それもブラジルに繋がるほどに深く、そして入り口には何重にも鍵をかけて。
 それが出来ないからとりあえず顔が隠れるように直樹の胸に埋めたのだ。
 その大胆な行動と思われるとも気づかないで。

 
 直樹は琴子に帰るか?と聞くとコクンと頷いたので、そのまま琴子を抱えて立ち上がると指導医、東山の所へすたすた歩いていく。


 「すみません。妻の体調が悪いので、今日は失礼させていただきます。それと、明日は夜勤ですので・・・」

 「お、おぉ!そういうことなら大事にしたってくれや。まぁ、体調悪いんやさかい明日はゆっくり休んで奥さんも入江君も無理したらアカンで。」


 イロイロと・・・。
 いろんな意味を込めて言うと直樹はそれを理解したのか「ありがとうございます。」とニッコリ笑ってそのまま琴子を抱えて部屋を出て行った。


 ――――なんや今のものすっごい笑顔は・・・。――――


 東山は直樹の去り際の笑顔に言葉を失った。



 
 「「・・・。」」




 再び静か~な静寂が部屋を襲う。
 あんな羞恥心のない希代のツンデレを見たことがない。
 直樹を狙う愚かな看護婦は真っ青になって固まっているし、安田もとばっちりを受けて微動だにしない。

   
 このなんともいえない空気。
 そんな空気を直樹の次に破ったのはこの飲み会をやると言った東山の大きく揺れるお腹とはっはっはという盛大な笑い声だった――――。
 そしてその後、荒れに荒れまくった飲み会になったのは言うまでもない。



                                 《END》 



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 と、とりあえず終わりました。
 スランプまっただ中で書き上げたのでこれまた消化不良もいいところなんですが、最後までアップさせていただきました。
 そのうち修正をかけることがあるかもしれませんが、それまではこのままにさせておいて下さいね。

 けれど、何ででしょう。王子が暴走しだすとスラスラ進んだのは・・・。

 ここまで読んでくださりありがとうございましたm(_ _)m

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はじめまして

いつも楽しく拝見させていただいています。今回のお話もすごく楽しかったです。羞恥心のない希代のツンデレがツボにはまり、はじめてコメントさせていただきました。これからも楽しみにしております

おはようございます

バカップルって言葉がぴったりな2人ですね(笑)キレイな看護士にやきもち焼いてだだこねる妻と自分がどんだけ愛してるかを妻にも周りにもアピールしながら慰める夫…どんだけラブラブなのさっ( ̄∀ ̄)だれかバケツを下さ〜い

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Re: はるいちばんさま。

こんにちは☆
そして、初めまして!!ようこそおいでくださいました!!

希代のツンデレにはまってくださり有り難うございます!!
今回はサイト史上最高のツンデレだと思っています(^_^;)
やり過ぎかと思ったんですが、意外と好評で(笑)
うふふ♪ ありがとうございます♪
また遊びにいらしてくださいね(^_-)☆

Re: あやみくママさま。

こんにちは☆

バケツはどのようなサイズをお求めですか?(笑)

利用できるものは全て使ってねじ伏せる!!
これが希代のツンデレのやり方ですよ。
書いてて、この場に居たい・・・って激しく思いました。
バカップルもいいとこですよね~(^_^;)
入江くんは恥ずかしくないかもしれないけど琴子ちゃんは死ぬほど恥ずかしがっているのを知っててやらかしてますからドSも入ってるかも・・・?

王子の暴走時には書き手も暴走しました!楽しかったです(^_^)

Re: miyacoさま。

こんにちは☆

もうこちらが読みながらニヤニヤ、時折「ぶっ!!」ですよ~(笑)!!
 こんなににやついたコメントは初めてです!!
 miyacoさんの「5ツボポイントと1吐血GET!!」わ~い!(^o^)/
 1つくらい萌えセンサーに引っかかればラッキーくらいに思ってたんで、思いも寄らぬ結果にビックリです!!間接キスにアルコール消毒は萌えて下さると思っていましたよ!!
 翌日の夜勤は、周りの視線も気にせずに平然と仕事してますよ。この希代のツンデレは。
 見せつけ大好きな私にとってスランプ状態はどこへやら、書き上がるのが早かったです(*^_^*)

 私こそmiyacoさん大好きですよ!!(♪相思相愛♪きゃっ(*^_^*)←バカ)
 次は納涼祭りに戻りますね~!

 とっても楽しい萌えコメントありがとうございました♪
 

Re: chan-BBさま。

こんにちは☆

こちらこそありがとうございました!
王子シリーズはchan-BBさんが好きですと言ってくださらなかったら『白衣の王子様』で終わっていました。
まさか、この王子が飲み会に行くなんてあの時は思ってもみませんでしたよ~。
なのでここまで発展させてくださったchan-BBさんには感謝でいっぱいですm(_ _)m

泣きわめく琴子ちゃんを宥め、愛情確認をし、そして見せつける!!
う~ん・・・器用だな・・・流石天才ツンデレ。
この先の王子の予定は未定ですが、いつかご期待に添えるように頑張りますね(^_-)

次は納涼祭りに戻ります~♪
こちらこそ有り難うございました♪♪

拍手お礼。

むさぴょんさま。

 こんにちは☆
 流石としかいえないですか・・・(笑)
 その言葉に尽きますね、本当に。
 書いてる私が言うのもなんですが・・・。
  
 むさぴょんさんが楽しんで頂けたのなら嬉しいです♪
 王子シリーズはとりあえず一区切りで、また何かネタの神が降臨したときにはよろしくおねがいします♪

拍手お礼。

紀子ママさま。

 こんにちは☆
 尚輝和尚を誰よりも気に掛けて下さる紀子ママさん。
 ありがとうございますm(_ _)m
 気を遣って琴子ちゃんに話しかければ、夫婦喧嘩に巻き込まれ、嫁に抱きつかれて旦那に睨まれ牽制され。幹事もやってくれたのにとんだとばっちりですよ。
 そんな和尚に合掌・・・。
 
 入江くんは琴子ちゃんの反応を楽しんでいたりするので泣き顔も可愛いとか思っちゃってるんですかね・・・。
 この件で入江くんの笑顔が少しでも子供達に向けられるといいなぁと願っております。
 楽しんでくださってありがとうございました!

拍手お礼。

Foxさま。

 こんにちは☆
 合掌ありがとうございます!!
 自分のしたいことを達成するためには妻をも利用するんですよね。
 そして最後には妻に『好き』を言わせるんです!!
 本当にスゴイ天才ですよね!!
 
 楽しんで頂けて嬉しいです!
 ありがとうございました♪

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Re: 吉キチさま。

こんにちは♪

 こちらこそ読んでいただきありがとうございました☆

 怒鳴って怒った方がよっぽど空気はクリーンだったと思いますよ(笑)
 静か~に嫉妬心丸出しで、牽制しつつ見せつけですから。
 そんなんだったら最初から琴子ちゃんを守ってあげればいいのにそれをしないということはこうなることを計算していたのではないだろうかという疑問が出てきちゃいます。やりかねないですよね(^_^;)
 何事にもお口で解決!!そんな吉キチさんのコメントを見て笑ってしまいました(*^_^*)
 そして納得!!
 
 ブラジルに通じるほどに深く潜りたい琴子ちゃんに同情しつつ、結局入江くんは琴子ちゃんしか目に入ってないということでめでたしめでたし・・・なのか?
 ここの王子はキスも見せつけも大好物ってことで・・・。
 そうですね、夜も王子の独壇場でしょうね(笑)

 さすがの私も想像出来ませーん(>_<)
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 皆様がHAPPYになりますように。

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