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月を仰ぐ

「イタkiss納涼祭り」第4弾




少し不思議なお話を・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 相原がおれの家に住むようになって初めての夏休み。
 あいつは学校の補習期間を終えた後半の休みはろくに勉強もしないで毎日ゴロゴロと過ごしている。
 朝、遅く起きてくるということは毎晩遅くまで起きているのだろう。
 ただ生活リズムが狂って眠れないだけだろうが。
 まぁ、あいつがどんな生活を送っていようがおれには関係の無いことだけど。





 ある日、部活から家に帰って喉の渇きを潤すためにリビングへ行くとキッチンの片隅に鬼灯(ほおずき)がバケツに挿してあった。
 今まで家に鬼灯なんてあっただろうかとミネラルウォーターを口にしながら見ているとおふくろがおれの視線に気づきその答えを言う。


 「これは琴子ちゃんのお母さんのお仏壇の仏花に使うのよ。もうお盆だもの。」


 入江家には相原家が来るまで仏壇なんて置いてはいなかった。
 GWやお盆だからって親父やお袋の実家に帰省することも大きくなってからは無くなっていて何年もお墓参りも行っていない。
 だから鬼灯を目にする機会なんて何年もなかった。
 おれはおふくろの言葉に特に返事をすることなくシャワーを浴びにリビングを出た。




 その晩、暑さのせいもあるが頻繁に喉が渇いてリビングに行くと、月の光が差してほのかに明るく照らされている窓が少し開きカーテンが揺れているのに気づいた。
 おふくろが戸締まりを忘れるなんて珍しいな・・・と、鍵を掛けるために近づくと庭に小さな人影が見えた。

 
 こんな時間になにやってんだあいつ・・・!


 相原は空を見上げてボーッとしている。
 星でも見ているのだろうか。
 ったく、東京の空は星なんて満足に見られないことぐらい分かるだろうに。
 おれは窓ギリギリに身を乗り出す。

 
 「おい。相・・・」

 
 月の光に照らされているあいつの顔が朱く染まっている。
 夕日でもないのに朱い月の光――――?
  
 おれは相原が見ている空を仰いだ。


 「・・・。」


 おれはごくりと息を呑む。
 



 なぜなら月がもの凄く近かったから。
 そしてその月は色濃く『黄色』を通り越して『朱色』
 時刻はすでに12時を指そうとしていて夕日が出ている時間ではないからここにあるのは当然、月。
 まるで、今日見たキッチンに挿してあった鬼灯の『朱』。


 『鬼灯は死者の霊を導く提灯に見立てている』
 と何かの本に書いてあった。


 少し離れたところに立っている相原の大きな目にも大きな月が映っている。
 瞬きすることなく開かれている大きな瞳。
 
 
 今、あの目に何が映っているのだろう。
 あの朱い月の向こうにある何かが映っているのだろうか。

 じっとりと汗が噴き出て背中に汗が流れる。
 それが風で冷やされて体温が下がっていくのを感じた。


 立ち去ることすら出来ず、ずっと相原を見ていると月が雲に隠れて夜の闇が戻ってきた。
 フッと辺りが暗くなると同時におれは靴も履かずに裸足で外へ飛び出した。



 「いりえ・・・くん?」


 おれは相原の腕を掴んでた――――
 
 






       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 「直樹君ありがとうな。」

 
 お義母さんの仏壇に手を合わせているとお義父さんがおれにお礼を言った。
 仏壇の仏花には鬼灯が一緒に挿してある。


 おれはお参りを終えるとお義父さんの方に身体を向けた。
 

 「琴子はもうここに来たんですか?」

 「あぁ、朝一番に来たよ。今回は琴子が仏花を作ってくれたんだ。奥さんに教えて貰ったんだそうだ。」


 もう一度仏花に目を向けるとさっきは気づかなかったが妙にアンバランスな気がしてならない。
 不器用なりに一生懸命作っていた事を想像すると自然に頬が緩む。


 「今年はいろんな報告が出来たから母さんも驚いているだろうよ。俺も琴子が結婚しても一緒に暮らせるなんて思ってもみなかったしな。本当にイリちゃんと奥さん、いや入江家の皆さんには感謝してもしきれねぇ。直樹君、君にも。」

 
 「いえ・・・。」

 
 お義父さんは涙ぐんでお義母さんのいる仏壇を眺めている。
 きっと帰ってきているお義母さんと話をしているに違いない。
 おれは軽く会釈をすると静かに和室をでた。




 寝室に戻るとそこに琴子の姿が無かった。
 けれど、ベランダに出る窓が開いている。
 クーラー付けっぱなしで窓も開けっ放し。
 おれは溜め息を吐くと琴子がいるであろうベランダに出た。

 
 「おい、部屋の冷気が逃げるだろうが。」

 「あ・・・ごめんね、入江くん。」


 やっぱり琴子は月を見ていた。
 遠くにある小さないつも通りの月を。

 あの朱い月はあの日から見ることはなかった。
 怖いくらいに大きく燃えるような朱い月。
 月が雲に隠れたように琴子も暗闇に引き込まれてしまったんじゃないかと慌てて琴子の腕を掴んでしまったあの日。
 あの後、不用心だからと最もらしい理由をつけて強引に琴子を家に押し込んだ。
 あの月と闇に琴子が捕らわれてしまわないように・・・。
 そんな事を思っているなんてあの時の琴子は知らなかっただろう。
 もちろん今も知らないけれど。

 
 「月、綺麗だね。」

 「・・・そうだな。」

 「でもね、一度だけ怖いって思った事があるんだよ。」

 
 そう言うと琴子はおれの腕をぎゅうっと掴んだ。


 「入江くんと一緒に住むことになった最初の夏に見た朱い月の事覚えてるかなぁ。大きくて朱くて吸い込まれそうな月だったの。」

 「覚えてないな。」


 おれはシラをきる。
 琴子は「そっか。」と寂しげに笑った。


 「あたし、小さい頃からお母さんに会いたくなると月を見てたの。お父さんが教えてくれたの『お母さんは月に帰っていったんだよ、だからお母さんはいつも月から琴子を見てるから寂しくないだろう?』って。」
 
 「・・・かぐや姫?」

 「ふふ・・・そうそう。小さい頃はお母さんはかぐや姫だってずっと思ってた。今はそうは思わないけど。」


 琴子はクスクスと笑いながらおれを見たあと、ふっと真顔に戻ると月を仰ぐ。

 
 「あの日、あたしもお迎えが来たんだと思った。」

 「え?」

 「真っ赤な月が怖くて堪らないのに目が離せなくって、動けなくって。お家に入らなきゃって思ってても自分でどうすることも出来ないくらい身体が動かなかった。でもね、入江くんが助けてくれたの。」

 「・・・。」

 「あの時入江くんがあたしの腕を掴んでくれなかったらあの闇に消えてたかも・・・って思った。おとぎ話の世界だからそんなことは絶対あり得ないんだけどね。」

 「琴子・・・。」


 おれの腕を掴む琴子の手に力が籠もる。
 思い出すだけで怖くなったのだろう。
 おれは琴子の後ろに回りぎゅっと抱きしめてやる。
 琴子はここの住民だと月に示すように。


 「入江くん?どうしたの?」

 「別に・・・」

 「あたし、月に行かなくってよかった。あの時入江くんが腕を掴んでくれなかったら今、入江くんのお嫁さんになってなかったかも。」

 
 不安そうな琴子の顔。
 おれは後ろから琴子の頬にキスを落とす。
 それに反応して後ろ振り返った琴子の唇にもキス。


 「おまえはおれの奥さん。」

 「え?」

 「月の住民でもなく世田谷区在住の入江琴子さん。」

 「ぷっ な、何?どうしたの?入江くん。」

 「別になんでもない、お前がおかしな事を言うから事実を言ったまでだ。暑いから早く部屋入るぞ。それに今はお義母さんは和室でお義父さんと久しぶりに会話してるよ。」

 
 おれは「何で?」という顔をぶつけてくる琴子と部屋に入り鍵を掛け月に見られないようにしっかりと閉めた。


 「まあまあの出来だったんじゃないか?仏花。」

 「・・・お参りしてくれたの・・・?」

 「おれはお前の家族だからな。」

 「・・・いりぇく・・・」

 
 琴子の大きな目からぽたぽたと零れる涙。
 拭っても拭ってもこぼれる涙を止めるために自分の胸に琴子を閉じこめる。
 思わず掴んでしまったあの日のおれからは想像もできなかった今のおれ達。
 あの時、裸足で飛び出してしまったおれは今のおれ達をどう思うだろう。
 珍しくおれらしくない事を思ってしまっていることに苦笑しながら、腕の中の琴子の顔を窺う。

 

 
 ―― そう、琴子はおれのもの。やっと手に入れたおれの琴子 ――




 おれは琴子を救ってくれた高3の自分に感謝しながら、胸の中で幸せそうに身を任せている琴子にキスをした。


                                        《END》



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
 先日、急な予定変更に深夜、義母と24時間営業のスーパーにお墓参り用の花を買いに出掛けたんです。
 今の時期は鬼灯も一緒に入っているのでいろいろ妄想していたらこんなお話に・・・(汗)
 現実離れしているので物語的に読んでくださいませ(^_^;)

 子供の頃一度だけ真っ赤な満月を見たことがあります。
 サイズも二回りくらい大きかったので子供心に恐怖を感じたのを覚えています。

 
 

 

 
 

 
  

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拍手お礼

紀子ママさま。

 こんにちは~。

 あの朱くて大きな月はやっぱり怖いです。
 思い出すと何とも言えない圧迫感があって。
 鬼灯の朱と朱い月の神秘さ。
 入江くんの気持ちの変化や琴子の月に対する隠れた思いなど、お盆は様々な思いが交差していると思います。
 紀子ママさんがじーんと感じてくださった台詞も暖かみがあるかな?と書いてて思っていたので、そう言ってくださるととても嬉しく思います(*^_^*)
 ありがとうございます。

Re: ひろりんさま。

こんにちは!
 
 とても心の籠もった温かなコメントありがとうございました。
 いろんな所でひろりんさんのコメントを目にするのですが、どのコメントもとても深くて素晴らしいなと思っておりました。まさか私にもこんなコメントをいただくことが出来るなんてとても光栄です!ありがとうございました。

 今回のお話は、全体像がふっと降りてきて初めてノートに書かず直接PCに打ち込んで出来上がったというミラクルなお話です。
 鬼灯の意味とと月の神秘さ。お盆の意味などいろんな物が交差するこの時期は不思議な時間が流れているような気がして・・・。
 そんな感覚をひろりんさんも感じ取ってくださったんですね(*^_^*)
 有り難うございます。

 私はそんなたくさんの引き出し持っていませんです~。
 相変わらず、長編苦手で書けませんし、言葉をあまり知りません(汗)
 けれど、そういう風に思っていただけるのは凄く嬉しくて。
 いつか実力が伴ってきた時には長編のシリアスに物に挑戦できたらと思います(^_^)
 基本ピンク脳なのでシリアスが思い浮かばずが現状ですので、気長にお待ち下さると有り難く思います。
 

Re: ななさま。

こんにちは。いらっしゃいませ!

 そうやって言っていただけるととても嬉しいです。
 ありがとうございます。

 さて、パスに関してですが、答えは合っていますよ(^_^)
 ただ、入力するローマ字がちょっと違いますね(^_^;)
 そこをクリアすれば必ず鍵は開きますよ!
 ・・・ってそんな大層なモンでもありませんが・・・。
 
 ここではこれくらいしかお返事できませんm(_ _)m
 申し訳ないです。
 
 是非トライしてみて下さいね。
 

Re: miyacoさま。

こんばんは!

 現実主義者である入江くんが息を呑むほどの大きな朱い月。
 真っ赤というよりオレンジ色の鬼灯の実の様な朱。
 まだ、自分の気持ちに気づいて居ないけれど、琴子ちゃんがここから居なくなるのは嫌だという気持ちが動いたんじゃないかと思います。
 
 神秘的な雰囲気を感じてくださっただけでも嬉しいです(*^_^*)
 本当にあの朱い月は怖いですね。
 こんなお話でも萌えポイントをしっかり抑えてくれることに感謝です!

拍手お礼。

藤夏さま。

 こちらにもこんにちは!
 たくさんの拍手コメントありがとうございます!

 このお話は奇跡に空から降ってきたお話です。の割に内容薄いカモ知れませんが(汗)
 私のピンク脳に朱い月に吸い込まれそうになっている琴子ちゃんの腕を入江くんが必死に掴んでる絵が浮かびました。
 無自覚で咄嗟に身体が動いてしまった理由は分からない入江くんですが、その理由に気づいた数年後、きっと入江くんは掴んで良かったと思っているはず。
 そうなれば目の前の琴子ちゃんが可愛くて仕方ないですよね。
 愛の垂れ流しってやつです。
  
 すこし不思議なお話でしたが、うるっとしていただけて嬉しかったです!

拍手お礼

Foxさま。

 こんにちは!

 奇跡的に空から降ってきたお話です。
 もう二度とこんなスムーズに書けることはないと思います(^_^;)
 実際いま手こずってますし・・・。
 朱い月に奪われてしまうんじゃないかと慌てて手を掴んだ入江くんのまだ気づかない感情と、数年後の素直な気持ち。
 優しくて、ちょっと切ないような。
 こんなお話がまた書けたらいいなって思います。
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 こちらは「イタズラなkiss」の二次創作と管理人の好きな物etcをつぶやくblogです。

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 皆様がHAPPYになりますように。

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