スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

白衣の王子様 -2-

続きです☆



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







 外来が終わった1階フロアは人がまばらで静かだった。
 琴子は受付の誰もいないベンチに座っていた。
 あれから琴子は看護婦達の直樹についての勝手な話を聞いていたのだが、耐えきれなくなってその場から逃げるようにして離れていたのだ。


 『今夜入江先生を誘ってみよう思ってるんやけど、どうやろか。』

 『入江先生の奥さんは東京にいるんやし、私らにもチャンスはあるんちゃう?』

 『あんなカッコイイ旦那をおいて東京残るやなんて夫婦関係も終わってるかもしれへんし。』

 『ほんなら、寂しい入江先生を私らが慰めてあげたほうがええね。』



 ――― どうしてあたしは入江くんの奥さんって思われないのかしら ―――


 何もかもが完璧すぎる直樹の奥さん像というものから一番遠くにいるらしい琴子。
 琴子がどんな思いで直樹と1年離れる決断をしたのかなんてここにいる看護婦達は知るはずがない。
 そして今日という日をどれだけ待ち続けてきたか。
 直樹にに会えると期待と嬉しさで高鳴っていた鼓動は、今では不安と後悔でしかなかった。


 「こんなことなら予定通りにすればよかったなぁ。」


 もう一度直樹の働く姿を見たい。
 前を向いて真剣に患者さんと向き合う姿。
 なのに、肝心な本人には会えないわ、妹にされるわ、直樹の誘惑作戦を耳にするわで何も良い事なんてなかった。

 琴子は小さく溜め息を零すとうつむき、足をつんと伸ばしたままかかとをトントンと鳴らした。








 「おれ、妹ができたんだってな。」

 「・・・え?」


 琴子の大好きな声。
 大きな目からこぼれ落ちそうになっているのをグッと我慢して顔を上げると、一番会いたかった愛しい人が前のベンチに座っていた。
 けれど、その人は琴子の方を向くことなく前を向いたまま。


 「待ち合わせ、ここだっけ?」

 「・・・ファミレス・・・です・・・。」

 「じゃあ、なんでここにいるんだ?」

 「入江くんの、働いてる姿が・・・見たかった・・・からで・・・す。」

 「で?それは見れたのか?」

 「う、ううん・・・。」


 耐えていた涙が大きな目から零れる。
 それを拭うことなく琴子は顔を横に振った。
 でも、直樹は前を向いたままで振り返ることはない。


 「なぁ・・・おれの新しい妹ってどんな子か教えてくれないか?」

 「ち、違うの・・・あの人たちが勝手に・・・。」

 「ふ~ん。何て聞かれたんだよ。」

 「ど、どういう関係ですか?って聞かれたから・・・み、身内ですって・・・答えてぇ・・・が、学生ですか?・・・って聞かれて・・・そうですって・・・言っただけ・・・だもん・・・。」

 「・・・。」


 間違ったことは言っていない。
 身内だし、学生である。
 けれど、言葉が足らなさすぎるだろう・・・。
 直樹は大きくため息をついた。
 琴子はそのため息にビクッと身体を強張らせると「ごめんなさい」と呟いた。



 ――― ったく。どうしてこの事になるといつも消極的になるんだか。まぁ、言えなかった理由はいつもと同じだろうけどな・・・ ―――



 「おれ、前におれがお前を選んでんだから自信持てって言わなかったっけ?」

 
 直樹はようやく後ろを振り返った。
 そこには涙でぐしゃぐしゃになっている琴子がいた。


 「だ・・・だってぇ・・・っく・・・。」

 「ぶっ・・・ひでぇ顔。」

 「うっ・・・い、いりえくぅ~ん。」


 直樹は立ち上がり琴子の隣へドサッと座り直す。
 そしておもむろに手を伸ばし、琴子の髪の一束を手に取るとつん・・・と引っ張った。


 「・・・二ヶ月ぶりだな。琴子。」

 「・・・ふ、ふぇ・・・会いたかったよぉぉぉ。」


 琴子は白衣の直樹の胸に構うことなく飛び込んだ。

 「い、入江くん!約束破ってごめんなさい~!!迷惑かけてごめんなさい~!!」


 直樹は子供のように泣きながら謝り続ける琴子を優しく抱きしめ、甘い香りの髪に顔を埋めると「もういいよ。」と呟いた。
 相変わらず自分が琴子の一番中心にいることが嬉しいと思う。
 まぁ、当直明けの留守電の件数を見れば分かることなんだが・・・。

 「いりえくん・・・大好き。」


 直樹の胸の中で琴子が小さく呟く。
 直樹は琴子の耳に顔を寄せ「知ってるよ。」と笑った。


 

コメントの投稿

非公開コメント

かわゆい…

琴子ちゃんが一人ベンチで俯き、踵をトントンしているところを想像して萌え死にしそうになりました…可愛すぎる~!!
こんな可愛い琴子ちゃんを啼かせた、じゃない、泣かせた神戸の看護師さんたちには、ぜひとも二人のラブっぷりを見ていただかなくては!と一人燃えてしまいました。

そして、「ひでぇ顔」と言いつつも可愛くて仕方ないくせに、本当に素直じゃないですね、入江くん(笑)
琴子ちゃんの笑顔が見らえるのは次かな?その次?
楽しみにしております!

拍手お礼

紀子ママさま。

 こんにちは☆

 いつも元気で明るい琴子ちゃんは入江くんの奥さんの話になるとつい身構えてしまって何も言えなくなっちゃう。
 入江くんはそんな琴子ちゃんをちゃんと分かっているようです。
 どうしていつものようにはっきりと言えないのか、とか。
 
 毎日の様に顔を合わせている看護婦さんの性格からして琴子ちゃんがどんな目にあったかなんて直ぐ分かったようで、次回軽い反撃が入江くんからあるようです(笑)
 けど、琴子ちゃんがそれで喜ぶのかはそれは別の様です・・・。

 とりあえず、一区切りがつきますので~。
 
 コメントありがとうございました。

Re: miyacoさま。

こんにちは~。

このお話を書いているときに一人落ち込んでいる琴子ちゃんが落ち込みながら踵をトントンしている姿が浮かんだので書かなきゃっと追加したのです~。
子供っぽい仕草だけれど、琴子ちゃんらしいかな・・・って思って(*^_^*)
そこを萌えてくださって! 嬉しいです~♪

会えて嬉しいのにホント素直じゃないでしょう?入江くん。
自分の知らないとこで涙を流してたと思うとかなり面白くなかったでしょうね~。
琴子ちゃんの笑顔が見られるまでもう少しお待ち下さいね。
その前に入江くんの暴走にほんの少し被害被ります(汗)

コメントありがとうございました☆

拍手お礼

むさぴょん さま。

コメントありがとうございます。
素敵と言ってくださって嬉しいです。

最後まで頑張ってかきますね。
よろしくお願いします☆

Re: なおちゃんさま。

こんにちは☆
コメントありがとうございます♪

長いお休み中の間にたくさんのコメントありがとうございます♪
懐かしいお話達に目を通して貰えて嬉しいです。
新婚な2人にとっての遠距離生活はとても長くて触れられる距離にいるという事実だけで心が満たされてていきますよね。なおちゃんさんが仰るように何も言わないけど入江くんも会いたくて仕方がなかったんですよね。きっとこのあと琴子ちゃんにいっぱい甘えるはずです。このツンデレの威力は半端ナイです。
これからも過去作共によろしくお願いします。
プロフィール

narack

Author:narack
☆いらっしゃいませ☆
 こちらは「イタズラなkiss」の二次創作と管理人の好きな物etcをつぶやくblogです。

 イタズラなkissに関しましては管理人の勝手な想像、妄想によるものですので二次世界が苦手な方はご遠慮ください。
 また、作者様、出版社様、その他関係者様とは一切関係ありません。

 管理人の創作で少しでも笑顔になれたら嬉しいです。
 皆様がHAPPYになりますように。

最新記事
最新コメント
カテゴリ
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
カウンター
現在のお客様
現在の閲覧者数:
☆リンク☆
Swinging Heart (ぴくもん様)
こんぺい糖と医学書 (千夜夢様)
*初恋* (miyaco様)
雪月野原~snowmoon~ゆづきのはら (ソウ様)
Embrasse-moi (えま様)
みぎての法則 (嘉村のと様)
真の欲深は世界を救う (美和様)
日々草子 (水玉様)
むじかくのブログ (むじかく様)
みんなのイタKISSブログ (ルン様)
Snow Blossom (ののの様)
『ハピ☆スマ』バナー
相互リンクはイタズラなKissの二次創作サイト様のみ受け付けております。 その他のサイト様とのリンクは受け付けておりませんのでご了承ください。 ☆イタキス創作家様へ☆ お持ち帰りの際は、ご連絡をお願いします。
☆新しくバナーを追加しました♪リンクされている方はお好きな方をお選びください☆
このブログをリンクに追加する
月別アーカイブ
最近のハマりもの♪
なんだか気になって仕方がない 『うたプリ♪』 ※曲が流れます♪        
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。