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やっぱり可愛い君が好き -後編-

 続きです。



 理美達が琴子の様子がおかしいことに気付いたきっかけは突然間食をしなくなったことだった。高校時代からまとまった時間があれば何処かへ食べに行こうと誘ってきた琴子が急に食べなくなってしまって心配になってしまったのだという。
 松本姉は部活中にやたらグーグー腹の虫を響かせて気力なく球拾いをしている日が続いていることが気になってきたらしい。
 直樹にしてみれば、それだけのことでどうして様子がおかしいことに結びつくのか分からなかった。
 というか、そんな些細なことでおかしいと思われる琴子は日頃どんな生活をしてきたのだろう。
 けれど裏を返せば、直樹は琴子の小さな変化にも気付けなかったし理解できていないことになる。
 それに追い打ちをかけるような母の言葉に、そういえば過去に同じ様なことがあったな、と思い出す。

 大学に入って初めての夏に入ろうとした頃、琴子は体重を気にして1人洗面所に閉じこもり泣いていた。
 体重という数字にこだわればショックな事だろう。けれど、それは身体がしっかり出来上がってきているという証拠でもある。見方を変えれば酷く落ち込むことはなかったかもしれないけれど、それ以上に恐れていたのは直樹に知られてしまうことだった。
 
 ただひたすらに直樹を想い続けていた日々。
 どんなことでも直樹に知られて嫌われることが何よりも怖かった。








 「誰かに、何か言われた?」

 
 直樹は優しくゆっくりと問いかける。琴子はその問いにふるふると首を振った。
 いつもならいつまでもはっきり言わない琴子に痺れを切らしてキツイ言葉を掛けてしまうのだが直樹は琴子が言い出すまで待つことにした。
 過去のいろんなやりとりで琴子が考えていそうなことを考える。
 昔みたいに直樹に嫌われたくなくて、嫌われるのが怖くて、一番効果が表れる方法として食事制限を選んだのだろう。それが直樹の中で一番考えられる理由だった。
 もしそう言ってきたのなら自信を持って言える。
 『そんな理由で琴子を嫌いになったりしない』と。
 男には分からない女心で悩んでいるのかもしれないが直樹にとってそんなことはどうでも良い。
 琴子が琴子であれば。
 決して言葉に出さないけれどそれだけで直樹は十分なのだ。


 ところが琴子の口から出た言葉直樹の予想に反していた。


 「あたし・・・入江くんに迷惑を掛けたくない。」

 「・・・は?」

 
 瞬時に理解できなくて直樹は思わず呟いた。  

 言葉が間違っていないか?
 何故そこでおれが迷惑を掛けられるのか。
 琴子の体型が変わったからといって自分にどのような影響があるのか何て直樹は全く理解が出来なかった。
 短い返事の後黙りこくって見つめているだけの直樹を琴子は大きく瞬きをして見つめる。その時に目から溢れた涙が零れる。


 「あ、あたしは・・・やっぱり何にも役に立てないから・・・」


 琴子は少しずつ・・・絞るような声で話し始めた。


 「あたしは・・・入江くんの足手まといになるばっかりで、力になることも出来なくて、分かってることだけどあたしはっ・・・松本姉みたいに、綺麗でも、頭が良くもなくて、スタイルも良くなくて。・・・さ・・・さほこさ・・・んみた・・・に・・・かわい、くも、おしとやかでもなくって・・・っく・・・入江くんが・・・そんなあたしでも・・・好きって言ってくれた事は嬉しくて、幸せで・・・入江くんの言葉を・・・信じてる・・・けど・・・」

 
 直樹は琴子から零れる言葉に比例するように目を見開いていく。
 

 「だからこそ・・・少しでも・・・入江くんの隣にいるために・・・自分が出来る精一杯で釣り合う奥さんになろうって・・・思ってたのに・・・最近また・・・体重増えちゃったから・・・入江くんに申し訳なくて・・・。」

 「琴子・・・。」


 直樹は俯いて小さく震える琴子の頭をゆっくり撫で、1つ聞いても良いか?と尋ねた。


 「今の話からどうしておまえがおれに迷惑がかかっていることになるんだ。」


 天才といえども恋愛に関しては琴子よりも初心者の直樹。
 琴子の台詞からはやっぱりどうしてそういう話になるのか分からないのだ。


 「だって・・・そんなあたしが隣を歩いていたら入江くんが完璧じゃなくなっちゃう・・・」

 「・・・おまえ、それ以上言うと怒るぞ。」


 最後の琴子の台詞に直樹は思わず大きな声を出してしまった。
 その瞬間、琴子の身体は大きく揺れた。


 「おまえはおれの飾りモンか?まさかおれがそんな事気にしておまえを選んだ何て事は欠片も思ってはいないよな?!」


 穏やかだった筈の直樹の声に怒気が含まれている事に気付いた琴子は目を潤ませて唇を噛みしめる。 
 大きく揺れる琴子の目に直樹の顔が映った。その表情は我ながら怖い、と直樹は思う。
 そして、


 「頼むから、そんな風に自分を痛めつけるのはやめてくれ。」  

 
 直樹は琴子を力いっぱい抱きしめた。
 泣いて泣きまくった琴子の身体は氷のように冷たい。
 カタカタと震える身体は驚くほど小さい。


 「おれはおまえだから、琴子だから結婚しようと思ったんだ。琴子がいたから夢を持てたんだ。琴子のお陰で嬉しいことも楽しいことも知ったんだ。琴子がいたからおれは・・・」


 本当の自分と見つめられるようになったんだ。


 「・・・っ!」

 「おれはおまえのがむしゃらで一生懸命なところが好きなんだ。確かに勉強は大事だ。けど諦めないで突き進んでいくおまえの姿勢が好きなんだ。おれが今のままで良いって言ってるんだ。周りの奴らなんか気にするな。」

 
 何事にも昔から直樹中心に考えてきた。
 将来一緒に歩めない人生になっても離ればなれになる事になったとしても、近くに居ることが許されている限り直樹の進む道のそばにいることが琴子の生き甲斐だった。
 それは結婚して命が尽きるまで一緒に居られることのなった今、その思いは一層強くなった。
 軽率な行動をすればそれは自分にだけではなく夫の直樹にも影響する。
 それはお互い様なことなのだが明らかに迷惑を掛けてしまうのは琴子の方で。
 だからこそ琴子は自分が出来ることを一生懸命取り組み、直樹のそばにいたいのだ。
 そんな琴子の事をどうして迷惑と思えようか。
 琴子の気持ちを理解しているからこそ今回の琴子の行動を直樹は素直に認め、受け入れる事なんてできない。
 

 「っう・・・!ぃりぇく・・・」

 「それとな・・・」


 直樹は自分の胸で泣いている琴子を起こすとボロボロになっている顔中の涙を拭った。
 いまだしゃくり上げている琴子の顔を両手で包むとゆっくりと唇を寄せた。


 「おまえ・・・可愛すぎ。」

 「・・・ふ・・・」

 「おれの事を考えて一生懸命になって、一体おれをどうしたいわけ?」

 「いりえく・・・」

 「こんな感情おれに教えてどうしてくれるんだよ。」


 そう直樹は言うと力いっぱい琴子を抱きしめた。


 自分のために一生懸命頑張って綺麗になろうと、可愛くなろうとがむしゃらな奥さん。
 やり方には賛成できないがこんな可愛い奥さん他にはいないと直樹は改めて思う。
 口には出さないけれど。

 


 「さてと。」


 腕の中で大人しくなった琴子をゆっくりと解放する。
 そこには涙がしっかり止まり真っ赤な顔の琴子がいた。
 直樹はニヤリと笑うとポンと肩を押してベッドに組み敷いた。


 「な・・・なに?」


 さっきまでの優しい顔は鳴りを潜め第六感が逃げろと警告を促す。


 「ん?一応確認しておこうと思ってな。」


 そういうと直樹は琴子のキャミソールの肩ひもをするりと落とした。


 「確かにおれは琴子がどんな姿になっても気持ちは変わらない。けど大事な奥さんが泣くほどに周りから心配されるほどに追いつめられていたら夫として一緒に立ち向かっていかないとなぁ?」

 「へ・・・っきゃあ///」


 理解するよりも先に首筋にキスが落とされる。舌でなぞられて琴子はふるりと震えた。
 そうして驚くほど優しい顔をした直樹と目が合う。
 そして唇が重なった。

 あっと言う間に直樹しか知らない琴子が現れる。
 それは思いを寄せ合う直樹だけが知る姿。
 色気がないやら美人じゃないと気にしている琴子もきっと気付いていないのかもしれない。

 
 可愛い琴子も、綺麗な琴子も、色っぽい琴子も。
 

 (おれだけが知っていればそれで十分。)


 
 可愛い、可愛い君が好き。






 《END》




 うわあぁぁぁぁぁあん!!
 すみません!!
 久々書いた話の続きがこんなんで!
 入江くんぽくないですよね・・・。


 どっちかというと堂上教官っぽい感じになってしまいました。

 もう脳内が絶賛 堂上祭り 開催中!! 
 文庫本「別冊1」は・・・砂糖吐きそうな堂上でっっ!!
 久しぶりに小説読んだのですが、活字だけでこんなにもhshsするなんて思ってもみませんでした!!
 「誰か強いお酒ちょうだーい!」

 私も柴崎に激しく同意です!!

 前回の記事のとしょせんに反応してくださった方、めっちゃうれしかったです!!

 後日、堂上イラストを投下いたしますのでよろしくお願いしますm(_ _)m

 お返事も少しずつ書かせていただきますのでお待ち下さいね(^_^)

 短いお話にこんなに時間を掛けてしまってすみませんでした。
 少しでも楽しんでいただけたら幸いです♪ 
 
 
 
   

 
  
 
 

  

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Re: たまちさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

たまちさんが悶絶してる(笑)
書き手としてこれ程嬉しいことはないです(*^_^*)
自分で書いていてちょっと甘過ぎではないかと思ったのですが、開き直って更新しちゃいました。
入江くんが誰よりも大切で最優先順位にいるからこその琴子ちゃんの悩みでした。
いろんなことにストレートな琴子ちゃんの可愛さに入江くんは内心悶絶な筈ですよね。そして怒りつつも琴子ちゃんの気持ちはとても嬉しくて仕方ないと信じております!!

そしてこの甘さは堂上教官の影響も大きくてデスね・・・(^_^;)
大人の余裕を持ちつつもたまに(?)見せるあの独占欲と甘さがこのお話に反映されまくっています(汗)
「可愛すぎ」発言は堂上教官から頂きました(笑)官舎裏で絶対に言ってますよね!!
そんな堂上教官のイラスト、一枚だけ描きましたので今度公開させていただきますので良かったら見てやってくださいね♪

Re: YKママさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

増血剤~~!!(笑)
あはは(>▽<)!!
でもそう言っていただけてすっごく嬉しいです!!
今回の入江くんはちょっと甘すぎるなと思っていたので安心しました。
事態は大袈裟になってしまうがちな琴子ちゃんですが、入江くんへの思いが強すぎるが故なので、迷惑だなんて欠片も思いませんよね?むしろ可愛くて仕方がありませんよね?
日頃から思っていても口には出さない入江くんですがたまにこうやってポロリと出るデレ発言は相当な破壊力があるってもんです。
書いて良かった♪

本当にありがとうございました♪私も元気が出ました♪

ハルさま。

こんにちは☆

拍手コメントありがとうございます♪

お久しぶりです♪お元気そうで何よりです(^_^)
ちょいと今回のお話の入江くんはあまあまでやりすぎた感があったりしたんですが、ハルさんも快く受け入れてくださってとても安心しました(^_^)
普段はツンツンしている入江くん。二人っきりになった途端デレまくることは無いとは思いますが、たまにはこうやって琴子ちゃんに対して正直になって欲しいですよねー。
そうじゃなきゃ琴子ちゃんが可哀想だ!

夏休みが終わって日常生活も戻ってきたのでボチボチと創作していきたいと思います♪

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Re: 彩さま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

いえいえっこちらこそリクして下さったのにこんなに遅くなってしまって申し訳ないですm(_ _)m
ご希望に添えたかは本当に自信がないのですが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しい限りです。

あるきっかけで自信をなくしてしまう琴子ちゃんですが、入江くんが日頃からちゃんと素直になっていればそんな事態にならなくて済むのにと思いながら書いてましたが。
結果、琴子ちゃんラブだだ漏れに(>_<)
うん、たまにはこれっくらい甘くてもバチは当たるまい!

寛大な心で受け止めて下さりありがとうございます!!
もっとツンな入江くんを勉強します!! 
  

ありがとう

ありがとうございます。
お酒飲みたくなったよ~うふふ

こんな二人が大好き、こらからもいっぱい待ってます。

Re: じぇぐんよんさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

お酒欲しくなっちゃいましたか(^^)
でもこの2人は真剣にお互いを思い合っていますので。これを公衆の面前でやられると素面では居られませんけどね(笑)それこそ強いお酒がいるってもんです(^^)

無記名さま。 (2014.07/26 16:04投稿)

拍手コメントありがとうございます♪

約1年前のお話に感想をいただいたので私も読み返してみました。
うぉっ!別人過ぎる入江くんに愕然としました(笑)
何事にも無駄な行動を嫌うであろう入江くん。だからといってまとめ過ぎですね(^_^;)確認しながらダイエットのお手伝いと称して自分もちゃっかり楽しむとか一石三鳥とはこの事ですね(笑)
でもよく考えると琴子ちゃんにメリットはあるのか・・・?と思わなくもないですがきっとさらりとアフターフォローもするのでしょうね。
まぁ、翌日の紀子ママからのひやかしが入江くんにとっての代償って事で。なんだか改めてイリコトの萌えを再認識させていただきました(^^)
ありがとうございましたm(_ _)m
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