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「一緒にいこう?」

 
 久しぶりに最後まで一気に書き上げることができたお話です。





・・・・・・・・・・・・・・・・




 「入江くん連れてって!」

 「嫌だ。」

 「何で?!」

 「何でも。」


 今日で何日目だろうか。そんなやりとりが寝室で繰り広げられている。

 この夫婦は今、何の攻防をしているのか、どうやら琴子が直樹に何かお願いをしているようだ。
 実は琴子の直樹への要求はとかく難しいものではなかったりする。
 ただ、デートしたいだけ。買い物したり食事をしたり映画に行ったり、恋人や夫婦なら当たり前にしている事をしたいのだけれど、何故か直樹はいつも以上に琴子の誘いには乗らなかった。
 琴子もまた諦めることなく誘い続けている。
 それは職業柄故だからなのかもしれない。けど医師と看護師という職業を選んだ時点でそれは分かっていたことでもある。
 休日は常に不定期で夫婦揃って同じ日が休みという事はあまりなく、直樹は愛する妻のお願いとはいえ人の都合に合わせて休みを取るという人間ではないし、琴子だって直樹の休みの度に休めない。
 直樹と同じ休みを取ろうとすると同僚に代わって貰ったり根回ししたり・・・と、とても労力を要する。
 だけど。たま~に。本当にたま~に、奇跡的に2人の休みが重なることがある。
 今回の休みはまさにそれで、2人のシフト表を見たときには見間違いじゃないかと穴があくほど何度も何度も確認をした。
 それくらい貴重な休みだからこそ、今度の休みは直樹と何処かへデートに行きたいと思うのだ。

 それから琴子の時間の許す限りの「デートへ連れてって」と直樹の「嫌だ。」の攻防が始まった。


 「しつこい、もう寝る。」

 「うぇえ?!入江く~んっ」


 直樹は琴子のおねだりに全く取り合うことなく分厚い本を閉じると琴子に背を向けて寝てしまった。


 「入江くん・・・。」


 ねぇねぇ!といつもなら簡単に出来るのに。
 手を伸ばして背中に触れられる距離にいるのに目の前にある直樹の背中は頑なに拒否している。
 琴子にはそんな背中に手を伸ばす勇気はこれっぽっちもなく、ただ自分の目に涙が溜まっていくのをじっと感じることしか出来なかった。

 直樹はデートの誘いは頑なに拒否するものの、その他の事に関してはいつも通り。
 病院の通勤も一緒に行ってくれるしキスだって、それ以上のことだって何一つ変わらない。
 だからどうしてデートだけを拒否するのか、琴子はどうしても分からずただ混乱していくばかりだった。













 「今度はなんのケンカ?」


 勤務中の休憩時間。力なく机に突っ伏していると幹が2人分のコーヒーを手に琴子の隣に座った。
 顔を上げ「ケンカじゃないもん。」と口を尖らせると琴子は幹からコーヒーを受け取る。


 「じゃあ、何でそんなに落ち込んでいるのよ。琴子が落ち込む時ってだいたい入江先生絡みのことが多いじゃない。」

 「そんなこと・・・」


 ない・・・と、言い切れないのが悔しい。
 琴子は何とも言えない顔でコーヒーを啜る。


 「ほら、聞いてあげるだけはしてあげるから。さっさと白状しなさいよ。」

 「モトちゃん・・・。」


 ぶっきらぼうで面倒くさいといった口調でも、出会った頃から琴子の少しの変化に気付いてくれる幹。
 琴子はそんな幹に心の中で感謝しつつ「あのね。」と口を開いた。















 「そりゃ、アンタが悪いわよ。」

 「え?何で?!」


 サラリとそう答える幹に琴子は食いついた。
 ますます琴子は分からなくなる。


 「だって、あたし別に難しい事言ってないよ?ただ入江くんとデートしたいって。」

 「そうね。琴子の要求は大好きな人と一緒にいたい気持ちから出る当然の事だと思うわ。」


 琴子の気持ちは尤もだと言うけれど幹は直樹の肩を持つ。
 琴子は幹の言ってることはめちゃくちゃだと言わんばかりに眉間にくっきりと皺を寄せて首を傾げた。


 「入江くん、あたしのことキライになっちゃったのかなぁ・・・?」

 「あのね・・・キライになった人にキスマークなんて付けないわよ。」

 「・・・///」


 幹に項部分を軽く指を差されて琴子はバッと差された部分を手で覆い真っ赤になった。琴子の反応通りそっちの心配は皆無とみえる。
 幹は分かりやすい琴子の反応に、ブッと吹き出すとぽんぽんと頭を撫でた。

 
 「冷静になりなさいよ。だいたい、デートは1人が楽しめればいいのかしら?アンタ、そこを間違えちゃいけないわよ。」

 「あ・・・」


 幹の言葉に俯いていた顔をフッと上げた。
 その顔は、もう理解できないという表情ではなく何かに気付いた顔をしていた。


 「琴子の気持ちも分かるけれど、どうせするなら楽しいデートがしたいわよね?」

 「・・・そうだね。ありがとう、モトちゃん。」


 琴子の笑顔と話がうまくまとまったと同時に休憩時間も終わる。
 本当は今すぐ直樹のいる医局へすっ飛んでいきたいけれど、どんな事があっても仕事中に私情を挟むべきではない。どんなに落ち込んでていても、胸がざわざわと落ち着かなくても、冷静に、落ち着いて。
 琴子は自分に喝を入れるために、ばちんと頬を叩いた。














 「入江くん。」


 再び寝室。
 琴子は先にベッドに入り読書をしている直樹に声を掛けた。
 けれど直樹は一瞬視線を寄こしただけで本を読み続けている。
 待ちに待った久しぶりの2人一緒の休日は明日。
 拒否し続けている直樹の理由はハッキリと分かったわけではないが、もしかしたらもう既に予定が入っているかもしれない。でも今が最後のチャンスだと、ベッドに上がり直樹の目の前に座った。


 「入江くん・・・。」

 「ったく、何だよ。」


 直樹は溜め息を吐きながら本を閉じる。
 どうやら琴子の話を聞いてくれる気持ちはあるようだ。
 琴子はゴクリと唾を飲み込むと「あのね」と続けた。


 「入江くんも知ってると思うけど、明日は久しぶりの一緒のお休みでしょう?だからあたし、入江くんと一緒にデートに行きたいの。」

 「それは毎日聞いてる。」

 「ん・・・。だから、あたしと一緒にお出かけしよう?一緒に・・・いこ?」

 「・・・。」


 大きな目を目一杯見開いてしっかりと直樹の顔を捉え、琴子はお願いをした。
 これで断られたら諦めようと決めて。


 『連れてって』と『一緒に行こう』


 同じように感じるがよく考えると違う。

 人に求めるだけじゃなくて共に。
 2人でデートするのだから、2人が楽しめなきゃ意味がない。
 幹の言葉から琴子はそう答えを出したのだ。けれど間違っているかもしれない。
 
 不安そうな顔で見つめてくる目の前の琴子はもの凄く真剣で一生懸命で。
 そんな琴子に直樹はフッと口元を緩めた。

 
 「分かった。」

 「え?」


 予想外に簡単に了解されて琴子は驚いた。
 あれだけ拒否していたのにあっさりと了解をくれた直樹にただただ驚くばかり。


 「まあ、明日は久しぶりの休みだからな。ただしダラダラ出掛けるのは勘弁だからな。」

 「・・・ふぇっ」


 直樹からの回答を貰うまで怖かったのと、デートしてくれると言ってくれたことの嬉しい気持ちと安心したのと。ずっと見開きっぱなしだった大きな大きな琴子の目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。
 まるで乾ききっていた瞳をこれでもかと潤しているように。


 「ったく、泣くなよ。」

 「うぇっ ごめんね、入江くん・・・ありがと、入江くん・・・。」

 「ぷっ どっちなんだよ。」

 「どっちも~!!」

 
 優しく笑いながら抱きしめてくれる直樹の背中に腕を伸ばし、琴子は力いっぱい抱きついた。


 ここ数日琴子は「デートに連れてって」と直樹に求めてばかりいた。
 あまりにもデートする機会がないからそういう言い回しになっても仕方がないかもしれない。
 けれど、2人で一緒に楽しまなければ意味がない。貴重な2人の休みなのだから尚更のこと。

 だから「求めてばかりでごめんね。」と「お願いをきいてくれてありがとう。」なのである。



 「で?明日、何処に行くんだ?」

 「・・・考えてない。」

 「あんだけ騒いでおいて無計画かよ、信じらんねぇ。」

 「そ、そんなこと言ったってっ」


 ぐしぐしと泣きながら、琴子は直樹のパジャマを掴む。
 デートしてくれる約束を取り付けることに必死でその先まで頭が回らなかったのだ。


 「入江くんは、何処に行きたい?」


 2人で楽しみデートなのだから2人が行きたいところに行きたい。
 琴子はサイドボードのティッシュで涙を拭いながら直樹にお伺いを立てた。


 「家。」

 「・・・。」


 出不精の直樹にはこの質問をするべきではない・・・のだろう。
 でも2人で楽しい時間を持つには直樹の要望も叶えてあげたい。けれど外にデートも行きたくて、どうしよう・・・と琴子は直樹の膝の上に乗ったままブツブツと呟き始めた。
 真剣に考えている琴子を見て直樹はプッと吹き出す。直樹にとってこういう琴子はとっても愛おしい。


 「冗談。行きたいところ、ちゃんと決めておけよ。」

 「入江く~ん!!」


 明日のデートは琴子の行きたいところで良いと言った直樹に琴子は嬉しくて嬉しくて、その気持ちを伝えるようにありがとうの意味を込めて軽くキスを落としぎゅっと抱きついた。
 こうなったら早く起きて一日中2人で出掛けたい。
 明日に備えて早く寝なければ!!
 琴子は直樹からするりと離れるともぞもぞとベッドに潜り込む。 
 が、そうは問屋が卸さないらしい。 直樹は素早く琴子の手を掴んだ。


 「おい、何寝ようとしてんだよ。」

 「へ?」


 琴子はきょと、っと直樹を見上げた。

 
 「だって明日は久しぶりのデートだよ?早起きして早くお出かけしなきゃ。」

 「そうだな、明日はおまえがずっと行きたがってたデート、だな。」


 直樹はそう言うと勢いよく琴子を組み敷いた。いきなりの展開で琴子は全くついていけずに驚いた拍子に間抜けな声を上げる。


 「な・・・な・・・っ」

 「だから、今夜はおれの要求聞いてくれるよな・・・?」

 「い、入江くん?!」

 「2人で一緒に楽しもうな、琴子。」

 「ちょっ・・・」


 真っ赤で慌てる琴子にニヤリ顔の直樹が近づいてくる。
 琴子は慌てて直樹に手を伸ばすが、時既に遅し。瞬時に身動きを封じられてしまった。


 

 そうして急遽、直樹熱望の『甘い夜』が始まることになり、琴子熱望の『朝からラブラブデート』は午後からになったとかならなかったとか・・・?



 何はともあれ『2人一緒』という気持ちが大事、という事が身に染みて分かった琴子なのでした。



     《END》



・・・・・・・・・・・・・・・・

 やっぱりこんなオチ・・・(^_^;)

 
  

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Re: YKママさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

本当に言葉って大切で難しいですよね。一文字違うだけで相手への伝わり方が全然違いますもん。
私も最近人と接する機会や表に立つことが多いので言葉には気をつけているつもりですが、後にあってしまったと思うことはしょっちゅうです(^_^;)
かといって素直に受け止められない自分も居たりするので、琴子ちゃんの素直さは本当に凄いなぁ・・・と、書いてて思いました。
きっとYKママさんの旦那様も努力されているのでしょうね(^_^)

入江くんはもう、自分の思い通りに事が運べる小さなきっかけも逃さない男で(笑)
喜んで頂けて嬉しいです♪
まさにヒツジの皮を被っているオオカミちゃんなのです♪

Re: 紀子ママさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

あ!やっぱり紀子ママさんだったんですね!!良かった♪合ってて♪

この琴子ちゃんの素直さは入江くんのドS魂にドストレートだと思うんです。
そして紀子ママさんの仰るとおり、自分の要求はしっかりと押し通す。自分の立場をよく分かっているオオカミなんですよ、この男。

モトちゃんの台詞は私も書いてて考えさせられましたよ(^_^;)そしていかに日本語が難しいかも・・・。
人と接するときは勿論、ブログを始めてからは本当に考えさせられますデス。

ariさま。

こんにちは☆はじめまして☆

拍手コメントありがとうございます♪

最初はちょっと意地悪入江くんだけれど、最後はラブラブ(・・・で、いいですよね?)なお話。
楽しんでくださって嬉しいです。

最近やっとトータルで100話を超えることが出来て、他の素敵サイト様よりもまだまだ少なめな我が家ですが、ariさんが気に入ってくださるお話が一つでも増えることが出来るように頑張りますね。
なかなか更新できませんがこれからもよろしくお願いします♪

Re: あやみくママさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

ぶぶっ(笑)その台詞いいですね(≧m≦)
なんかちょっとその台詞を参考に一つお話が作れそうな気がしてきましたよ~。

でも琴子ちゃんにそんなおねだりされたらもう野獣になるっきゃないですよね!!
24時間じゃなく48時間くらい籠もっていそう(笑)

楽しいコメントありがとうございます♪

Re: 凛さま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

私も書きながら反省しました(^_^;)
そして私もモトちゃんのようなアドバイザーがほしいです(>_<)
でも、琴子ちゃんのように素直に受け入れなければいけませんよね。私だったらあーだこーだと言い訳していそうで、可愛げ何て欠片もないと思いますもん。

創作して約1年、未だに1人1人の個性を掴み、生かしきれていないなぁと大反省なのですがそういう風に仰っていただけて本当に嬉しいです。
頑張ります♪

あっ!因みに入江くんの方が9割近くを占めていてもおかしくないですよ(≧m≦)

とらさま。

こんにちは☆

拍手コメントありがとうございます♪

琴子ちゃんは本当に素直で優しい子ですから、入江くんでなくともキュンキュンしちゃいますよね♪
私の拙いお話からそう感じ取ってくださってありがとうございますm(_ _)m
とらさんの癒しアイテムの一つになれて感激でございます♪

また創作頑張れます(^_^)

ゆっちゃんさま。

こんにちは☆

拍手コメントありがとうございます♪

お返事が遅くなってしまって申し訳ありません(>_<)
こんなに遅くなってしまいましたが気付いて下さることを祈りながら書かせて頂いていますm(_ _)m

実は・・・このお話は私の体験を元に書かせて頂いております(^_^;)
実際はこんな可愛い(?)やりとりではないです(^_^;)
ですが、私もその時はすごく考えさせられましたし、日本語って本当に難しいなぁと思いました。
夫婦関係も然りって感じで・・・。
イリコトの様な夫婦関係を目標に過ごしていきたいものですね(^_^;)

藤夏さま。

こんにちは☆

拍手コメントありがとうございます♪

そうですね、イリコトのやりとりは恋人同士だけではなく友人関係にも当てはまることですね。
言葉一つ違うだけで相手に伝わるものも変わりますし相手を不快にさせてしまうこともあります。
私はいつも後になって反省することも多いので私にとっても永遠の課題のような気がします。だから私もモトちゃんのような素敵な人が欲しいです。
入江くんは藤夏さんの想像通りの夜を過ごしていますよ(≧m≦)
これも入江くんの計画に入っていると思いますのでー。でも琴子ちゃんは入江くんと一緒にいれば幸せな子ですからそんな事気になりませんよねー。
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 また、作者様、出版社様、その他関係者様とは一切関係ありません。

 管理人の創作で少しでも笑顔になれたら嬉しいです。
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