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『落雷』

 『イタkiss梅雨祭り2012』第4弾






 たまにはバカップルもいいですよね♪
 『落雷』











 『ねぇ、ことこちゃん知ってる?
 雷ってね、ピカって光って10秒経ってからゴロゴロなるのは遠くにいるからなんだって。でね、光って直ぐになったら近いんだって。』




 琴子には雷が鳴り始めると必ずしてしまうことがある。
 それは稲光が起こってから雷鳴が聞こえるまでどれくらいかかるか指を折って数えること。
 それをしたからってどうにか出来るわけではないけれど、いつ鳴っても驚かないように恐くないようにという心構えが出来るからかもしれない。

 子供の頃、重雄が仕事に行って雷が鳴る中1人で過ごさなくてはいけない時は1人布団を被っておさまるのをひたすら待っていた。
 布団を頭から被ってしまうと稲光が見えなくなるから少しだけトンネルを作って。
 どんなにしっかりとカーテンを閉めても必ず見えてしまう稲光。
 琴子は青白い光が窓に映る度に、1・・・2・・・3・・・と小さな指で数えた。








※  ※  ※  ※






 「何してるの?」


 風呂から上がって寝室に帰ってきた直樹は目の前に作られている山の端を少しだけ剥がして中の住人に声を掛けた。
 琴子が布団の山を作っている時はたいてい怒っていたり落ち込んでいたりするのだが、今日1日振り返っても夫婦喧嘩もしていないし鬱陶しい程に直樹にまとわりついていたからそれはないはずだ。
 梅雨に合わせてカタツムリにでもなっているのかと小さな布団のトンネルを覗くとそこから大きな目がしっかりと開いてこっちを見ているのを確認するなり直樹は勢いよく掛け布団を剥がした。


 「おまえ、せっかく風呂入ったのに汗だくじゃないか!」


 何もしてなくても梅雨独特の湿度で過ごし辛いのに。
 直樹は片手でガシガシと濡れた髪を拭くと空いている片方の手でエアコンのスイッチを入れる。
 この時期から冷房をかけたら真夏は過ごせないからこの時期は除湿。暫くすると心地良い風が流れてきて汗ばんだ琴子の肌をサラサラに変えていった。


 「だって恐いんだもん。」


 何が?と直樹が聞き返そうと口を開いた瞬間、カーテンに覆われた窓の隙間が青白く光る。
 琴子は慌てて再び布団に潜るとまたゴロゴロと雷鳴が響いた。それは徐々に大きくなってきて地鳴りがしているように響いていく。


 「・・・結構近いな。」


 直樹は外の天気を確認しようとしっかりと閉めてあるカーテンを一気に開けて外を覗いた。カーテンの音を聞いた琴子は勢いよく飛び起き慌てて直樹の元へ駆け寄った。


 「入江くんっ!カーテン開けちゃヤダ!!」

 「は?」

 
 直樹が慌てている琴子の方へ振り返った瞬間、これでもかという程の稲光が真っ暗な空を照らした。そしてその光と同時にさっきとは比べものに鳴らないほどの雷鳴が響き渡った。


 「きゃああああああ!!!!」

 「ぐ・・・ぐぇ・・・っ」
 

 琴子はあんまりの恐怖に力の限り直樹の背中に抱きついた。その力は折れそうな細腕からは想像できないほどの力で容赦なくがっしりとした直樹の身体を締め付けている。
 程よく筋肉がついた逞しい身体もさすがにこの馬鹿力に敵うはずもなく直樹は思わず呻いた。そして雷が収まるのと同時に我慢の限界と言わんばかりに琴子の腕を解いた。


 「こ、琴子!!苦しいだろうが!!」


 大袈裟ではなく本気で怒りを表す直樹だが目に涙を溜めて震えている琴子を見ると感情的に怒ることが出来なくなってしまう。行き場がなくなった怒りをどうにか収めるように直樹は大きな溜め息を吐く。


 「もう大丈夫だから。」


 直樹はさっきと同じように隙間なくぴっちりとカーテンを閉めると立ちつくしている琴子の手を引いてベッドに座った。
 ベッドの中央にあぐらを掻くとおいでおいでと手招きをし、自分の膝の上に琴子を座らせた。


 「おまえ、雷恐いのか?」


 直樹の膝に座った途端抱きついてきた琴子の背中をとんと叩きながら尋ねると真横にある小さな頭が上下に揺れる。得意な女はそうそういないとは思うが琴子の恐がり方は異常だった。


 「子供の頃からキライ。」

 「・・・。」


 「ゴキブリといい蜘蛛といい苦手なものばっかりだな」と言いかけた口を静かに閉じる。
 それは子供の頃父が仕事でいないときに琴子が1人で耐え過ごしてきただろうことが容易に想像できたからだ。確かに小学生が1人夜留守番するだけでも恐いだろうし雷の夜は尚更だろう。


 「でもね、あたし1人で頑張れるようにって友達がおまじないを教えてくれたの。」

 「おまじない?」


 琴子は漸く顔を上げると直樹の目を見てこくりと頷いた。


 「あのね。ピカって雷が光ってからゴロゴロなるまでの間それくらい時間がかかるか指を折りながら数えるの。これをしたからって雷はなくならないけどしないよりは覚悟が出来るっていうかまだマシというか・・・。」


 ここでタイミング良く外が青白く光る。すると琴子は1・・・2・・・3・・・と指を折りながら数え始めた。
 琴子の指が全て手のひらに収められたときゴロゴロと雷が鳴り始め、ほっとするような表情を浮かべた。


 「少し遠ざかったみたいだね。良かったぁ。」

 「・・・。」


 直樹は何とも言えない気分になる。
 これも結婚してはじめて知ることが出来た琴子の一面だろう。直樹は華奢な身体をぐっと抱きしめるとそのまま後ろに倒れ込みサイドテーブルの明かりを消した。
 部屋が暗くなれば外の稲光がとても際立ってくる。直樹は抱えられてもまだ指を折って数えようとする琴子の手をゆっくり握って制止させた。
 
   
 「もう数える必要なんかないだろ。おれがいるんだし。」

 
 直樹は握っていた手をそのまま指に絡ませるように動きを封じ込める。そいて空いている腕で更に自分の方へと琴子を引き寄せた。
 抱きしめられ、膝の上に抱えられ、そのままベッドに倒れ込みまた更に抱きしめられる。

 琴子は短時間に起こっている出来事に驚くばかりで受け入れるだけで精一杯。そして目の前にある直樹の優しい目も。

 約半年前の雨が降ったあの日にも同じ様な言葉を直樹に言われた。
 その時はこれからずっと一緒に居ていっぱいいっぱいキスをしてくれるほどに愛してくれるという思いが込められていた。けれど今日はずっとずっと傍にいてもっと頼って良いよと言ってくれているように感じる。
 今は1人じゃないから。1人で耐えなくても良いんだと、そう思うと琴子の力みすぎた身体がどんどん柔軟になっていく。


 「そうだったね。これからは入江くんが居てくれるから恐くない。」


 強張っていた琴子の顔に笑顔が戻る。クスクスと笑うと赤く染まる頬。直樹はその柔らかい頬にそっとキスを落とした。



 再び暗い空が青白く光り、唸るような雷鳴が部屋に響いた頃、琴子は直樹の腕の中ですやすやと夢の世界へと旅立っていた。
 琴子の規則的な寝息が聞こえるまで赤ちゃんをあやすように背中を優しく撫でていた直樹は、安心しきった琴子の唇にキスを落とし漸く目を閉じた。


 「おやすみ、琴子。」




      《END》




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 べったべたのバカップルにはなりませんでしたが幸せ感が皆様に少しでも伝わったら嬉しいなと思います(^_^)
 



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Re: 紀子ママさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

いつもいつも温かい気持ちを琴子ちゃん掛けてくださってありがとうございます。
私も小さい頃はよく数えていたんですが最近は「雷なんてナンボのもんじゃいっ!!」ってほぼやせ我慢的に数えず構えております(笑)自分で「なんでこんなに強がってるんだろう・・・。」と疑問に思うこの頃です。
小さい頃は誰だって恐いと感じる雷。仕方がないとはいえ1人で過ごさなければならないのは本当に勇気のいることですよね。本当に琴子ちゃんって健気で良い子ですね。
誰よりも琴子ちゃんの近くに居て人柄が誰よりも分かる入江くんだからこそ、逞しい心と身体で守って欲しいですよね♪


ゆっちゃんさま。

こんにちは☆

拍手コメントありがとうございます♪

私の創作する入江くんは本当に甘くてもはや別人になってしまっていて、ちょっとそこが悩みのタネではあるのですがもっと読んでみたいと言ってくださると本当に嬉しいです。
ゆっちゃんさまのご期待に添えられるように頑張ります~(^_^)

藤夏さま。

こんにちは☆

拍手コメントありがとうございます♪

はい♪前回のお話が切なすぎたのでバカップル要素を入れつつ書いてみたのですけどどうやら切ない癖(何それ)が抜けきっていないようでこれまたちょっと切ない感じに仕上がってしまいました(^_^;)
私も今でも雷苦手です(>_<)けれど私以上に子供達が怯えるのでなんとか踏ん張っておりますが(苦笑)「ほーら、稲光青白くて綺麗だねー」とか(笑)怖いっちゅうねん!!ってこれはあっちにおいといて(^_^;)
どんなに怖い夜でも入江くんがいてくれたらもう安心!!雷の夜の心配は無くなりましたよ(*^_^*)
密かに琴子loveな入江くんは雷の度に浮き足立っていたりして・・・?
結局は大バカップルなんです・・・はい(^_^;)
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