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『ずっとこのまま止まない』

『イタkiss梅雨祭り2012』第3弾(というか第2弾の続き)
 


『絶え間なく降る』の続きです。
 前回に続き切ない系です。




 











 『ずっとこのまま止まない』













 「琴子、おまえの笑ってる顔も怒ってる顔も泣いている顔も、全部おれのだって事知ってるか?」


 あたしの耳元で囁く入江くんの声はとても小さい。


 「だから、隠れて泣くなよ。」


 入江くんが・・・入江くんが照れくさそうに笑った。
 まだ酔ってるのかな?なんて思ったけれどその声は凛としている。
 結婚してから知った新しい一面。その顔があまりにも真剣だったからあたしは思わず心にずっしりと溜まっていた不安を零してしまう。言ってはいけないと思っていたのに。


 「・・・にならないで。」

 「え?」

 「嫌いに・・・ならない・・で。」

 「誰が誰を?」

 「入江くんが、あたしを・・・。」

 「・・・。」


 入江くんは暫く黙った後、あたしの顔をぐっと掴んで引き寄せた。鼻同士がくっついてしまうくらいの距離で入江くんの顔がぼやけて見えない。

 
 「なんでおれがおまえを嫌うんだ?」

 「だって・・・あたし、嫌な女なんだもん。」

 「何処がだ?」


 入江くんの表情が分からないから今、どんな風に思われているか分からない。けれどあたしは止めることが出来ない。


 「最初はあたしの存在を知ってくれればいいって思っていただけなのに、一緒に暮らし始めたら少しでもあたしを好きになって欲しいって思い始めてて、入江くんと結婚できたらもっと一緒にいたいとか、もっとキスして欲しいとか・・・もっとって思っちゃう。」

 「・・・。」

 「こんな欲深くって我が儘なあたしが情けなくって嫌で仕方がないの。あたしがこんなに図々しくなかったらあたしよりもっと素敵な人と入江くんは幸せになれたんじゃないかなって・・・。」

 「琴子・・・。」

 「沙穂子さんと幸せになれたんじゃないかなって・・・。でもそう思うと余計に辛くて苦しくて。もう・・・わかんないのっ・・・こんな自分が嫌なの・・・。」


 言いたいことを全て零したあたしを入江くんは何も言わずにじっと見ているだけだった。
 未だに入江くんに抱きしめられていたあたしは「ごめんなさい」と大好きな手を自分の身体から離す。
 こんな醜い女なんていやよね。腹黒いなって思う。
 入江くんから向けられる真っ直ぐな視線が辛くてゆっくりと身体を動かしたあたしは「おやすみなさい」と背を向けた。


 何も言ってくれないのはきっとあたしに愛想を尽かしたから


 そう思うとまた胸が苦しくなって涙が溢れ出した。

 
 「琴子。」


 入江くんはあたしを呼ぶなり、強引に肩を掴んで引き寄せてきた。あっと言う間に組み敷かれてしまったと思ったらぎゅっと抱きしめてられる。
 その力はさっきとは比べものにならないくらいに強くって振りほどくことも出来ない。動けば動くほどに締め付けられていくみたいであたしは入江くんに従うしかなかった。


 「入江く・・・」

 「おまえは馬鹿だよ。」

 「ん・・・。」


 抱きしめられたかと思えば直ぐキスが降ってくる。
 おでこ、瞼、頬、鼻、耳、そして唇。
 大好きな、大好きな入江くんとのキス。


 「『苦手だけど嫌いじゃない。』」

 「え?」

 「『おまえはおれが好きなんだよ。おれ以外好きになれないんだよ。』」

 「い、いりっ」

 「『おれ以外の男、好きなんて言うな。』」

 「『大好きだよ。』」

 「『おれはもう、平気じゃない・・・。』」

 「ん・・・ふぅ・・・ん・・・」


 入江くんは一つ何か言う度に一つキスを落としてくる。そして最後は息が出来ないくらいの深いキス。
 あたしはそれをただ受け止めるのに必死で何も考えられなくなる。
 もう息が苦しくって少し抵抗をすると察してくれたのか入江くんはゆっくりと解放してくれた。


 「おれも、おまえと同じ。」

 「え?」

 「琴子がラブレターを渡してきた時の印象はただの頭の悪い女ってくらい。」

 「・・・。」

 「一緒に暮らし始めたらやっぱり予想通りに単純で馬鹿で、呆れるくらいにポジティブな変わった奴。ただただおれに好き好き言っては満足そうにしている変な女。」

 「・・・酷い・・・。」


 どこがあたしと一緒なのよ。尖らせたくなくても無意識に尖ってしまう唇。
 入江くんはフッと笑って尖った唇にそっとキスしてくれた。


 「最後まで聞けって。でもいつの間にかおまえがいることが当たり前で、琴子に告白されるのも、おまえが淹れたコーヒーを飲むことも日常で、ずっと続くと思っていたんだ。」


 入江くんがあたしの頭を撫でていつものように髪を指に絡ませる。


 「自分から沙穂子さんを選んでおいておまえが金之助にプロポーズされてそこでやっと気付いて。おれの方が自分勝手で結果、おまえも沙穂子さんも金之助も傷つけた最低の男だよ。」

 「違うっ入江くんはっ入江くんはとっても優しいの。」


 あたしは入江くんの背中に手を回し、ぎゅっとパジャマを握る。急にあたしが入江くんの言葉を遮ってしまったからとても驚いた顔をしている。でもその顔は怒ってもいない呆れてもいない、目の前の切れ長の目は静かで穏やか。


 「自分の事を後回しにしてやっと見つけた夢を犠牲にして、お義父さんと会社とパンダイの人を全力で守ろうとして。入江くんは自分の気持ちを抑えてみんなを守ろうとしたの。あたし、こんな優しい人人、世界中探してもいないよ。」


 そりゃあ・・・あの時、入江くんがお医者さんの道を諦めて大学も休学して、そして沙穂子さんとお見合いをして婚約もして。その時あたしは悲しくて苦しくてどれだけ泣いたか分からない。けれどいつか、入江くんが夢を諦めた代償にやってくる未来が明るく幸せなものであるならば・・・って思ったら入江くんを素直に応援してあげられると・・・。あたしの長い恋も終わらせられる筈だと。




 あの雨の日。
 入江くんが迎えに来てくれたあの夜。
 入江くんがずっと一緒にいても良いって約束してくれたとき、得られるはずだった未来の幸せが崩れてしまったような気がしてならなかった。
 パンダイの状況、その社員の行く末。あたしと入江くんが一緒になれば会社経営が危うくなることくらい頭の悪いあたしだって分かることだから。
 結果、今となれば会社も落ち着いて、お義父さんの病状も回復。そして入江くんの夢も再び歩き始めた。

 けれど、あたし達の幸せの上にはもちろん悲しい思いをした人もいるわけで――――――――。







 あたしはそれから言葉を繋ぐことが出来なかった。



 「おれたち、いろんな人を傷つけてきた。」


 それはあたしと入江くんが金ちゃんの所にいった帰りにあたしが呟いた台詞。


 「傷ついてきたからこそ幸せにならないといけない。仮にここで終わってしまったら沙穂子さんや金之助にも申し訳ないよな。」


 入江くんはあたしの目を優しい目で捉えたままコツンとおでこをぶつけてきた。
 触れた部分から入江くんの気持ちが伝わってくる感じがする。
 大丈夫だよって言ってくれてるような気がする。
 
 落ち込みだすと冷静でいられなくなるあたし。後ろ向きな気持ちが少しずつ浮上していってる気がする。

 入江くんはこんなあたしも全て受け入れてくれてる。


 「あたし、これからも入江くんと一緒にいてもいいの?入江くんと幸せになってもいいの?」

 「何言ってんだ。もっと幸せにならなきゃいけないんだ。」

 「もっと?あたし、今でも十分幸せだよ?」

 
 小さな声できっぱりと言い切るあたしに入江くんは笑いながら「まだまだだよ。」と耳元で囁いてくれる。



 天才で運動神経も抜群で、格好良くて何でも出来ちゃう入江くんの奥さんになれたことはあたしにとって奇跡。
 それなのにもっと幸せになっていいなんてこんなに幸せなことはない。
 入江くんに抱きしめられてキスされて。
 一緒に寝て、目が覚めたら隣には入江くん。ちょっと寝癖がついた眠そうな入江くん。
 大学の人やお義母さんや裕樹くんでさえ見たこともない入江くんをあたしは知ってる。

 そう思ったら胸がきゅんと締め付けられてじわ~って熱くなる。
 顔もすっごく熱くて今きっと真っ赤な顔してる。
 顔の火照りを冷ますかのようにまた涙がポロポロと溢れる。


 「ぷ・・・また泣いてる。」

 「だって・・・。」


 あたしはこの瞬間を噛みしめたくてもっともっと味わいたくなってこれでもかってくらいすり寄った。
 くっつきすぎてしっとりと汗をかきつつあるけれどきっと今なら入江くん怒らないような気がするし。
 すると入江くんは予想通り、きゅうって感じで抱きしめてくれた。緩くもきつくもない程よい力加減。


 



 ――――トクン トクン トクン トクン――――




 入江くんの胸の音。
 入江くんが生きてる証。



 「あたし、もっともっと入江くんと触れ合いたい。ぎゅってしてたい。」

 「なんだ?今度はやけに積極的だな。」

 「ち、違うよ///そういう意味じゃなくてっ!」

 「ふぅん。じゃあ、どういう意味?」

 「・・・入江くん酔ってるでしょ///」


 顔を近づけてニヤリと笑う入江くん。この表情はいつもの入江くん。


 「そうだね。あたししか知らない入江くんに会うのもいいかな///」


 勇気を出してあたしからキス。
 すっごく恥ずかしいんだけれど、入江くんは「かしこまりました」っておどけたあとお返しのキスをくれた。
 

 優しくってあまーい、あたしだけが知ってる入江くんだぁ・・・


 


 あたしが幸せになることは傷つけてしまった人にも幸せを分けてあげられるのかな。


 



 みんなみんな幸せになれなすように。
 最愛の人に出会えますように。
 共に歩くことが出来ますように。



 


 これから起こる入江くんとの幸せな時間。
 もう心も身体も蕩けそうだけれどもっともっと欲しくてあたしは全てを入江くんに委ねる。




 あたしは入江くんの隣で誰よりも幸せになるんだ――――。




      《END》




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 止まらない2人の愛情を重ねてみました。

 琴子ちゃんは凄く明るくてパワフルな女の子っていうイメージがあると思うんですが、見えないところで落ち込んだりすることもきっとあると思うんです。
 そんな姿を入江くんが気付いて救ってほしいなって思ったらこんなお話ができました。

 琴子ちゃんに可哀想な思いをさせてゴメンね(>_<)と謝りながら書いてました。




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Re: ぴくもんさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

きゃ~(>▽<)ぴくもんさん!お忙しいのにコメントありがとうございます!!それなのに私ってばちっともコメントできなくてスミマセンm(_ _)m
なかなかまとまった時間がなくてちょこちょことお返事書くことが精一杯で・・・今日も昼から懇談会っす(-_-)って私だけが忙しいわけではないから出来ない理由にはならないですけど・・・。

さて、今回のお話は本当に琴子ちゃんが可哀想で、更新するのをすごく悩んだ作品です。やはり遊びに来てきて下さる方が幸せな気持ちになって下さることを掲げているブログだけにこの作品はそれに反していました。
そしてこういう作品でも受け入れて下さって本当に有り難く思いました。
けれど落ち込む妻を支える入江くんを書けたのはちょっと満足というか書けて良かったです。どちらかと入江くんの優しさを強調させたかったので、ぴくもんさんのご意見を読んでホッとしました。
「あんたたまには良い事言うじゃん!!」とバシバシと叩いてやって下さい(^_^)

Re: 紀子ママさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

そうですね、今回は切なく悲しいお話でした。
入江くんはきっと琴子ちゃんの傷を癒してあげたと思います。日頃からちゃんと琴子ちゃんを守らないからこうなるんだと思わなくもないですがやるときはやる入江くんだと思うので(^_^)
紀子ママさんが仰るとおり、琴子ちゃんは入江くんに対して本当に見返りを求めませんよね。女性の鑑のような素敵な女の子。だからこそ入江くんの心を動かし愛されるのだと思います。
わたしもそんな素敵な人間になりたいです・・・と思いつつなれないのは純粋じゃなくなって図々しくなってしまったからでしょうね・・・(^_^;)

Re: YKママさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

読みにくい文章なのに涙して下さったなんて!!ありがとうございますm(_ _)m
琴子ちゃんって誰に対しても周りの人への思いやりが強い子で入江くんに対してはもっと強く敏感なように思います。そして入江くんの言動にも敏感で何気ない言葉でも心が激しく揺れてしまう。YKママさんの仰るとおり琴子ちゃんは細やかな心の持ち主ですね(^_^)

今回切ないお話だったので少しは明るいお話を・・・と思っています。また、覗いてやって下さい♪

sarasaさま。

こんにちは☆

拍手コメントありがとうございます♪

私が創る入江くん像は本当に甘くて書く度に「原作にはほど遠いなぁ・・・」と図々しく思ったりしているのですが、入江くんって日頃冷たい態度をとっていても常に琴子ちゃんの事を把握して守っているような気がします。上手くアメとムチを使いこなしているというか(^_^;)
最後にほっこりとして下さったということでホッとしました。
こちらこそ、お時間のあるときにまた覗きに来て下さいね♪

ゆっちゃんさま。

こんにちは☆

拍手コメントありがとうございます♪

とっても深いコメントに私も改めて考えてしまいました。
ゆっちゃんさんが仰ったことは実生活でもいえることなので我が身の言動を振り返りつついろいろと反省しておりました(笑)
確かに必ずしも自分が考えていることが相手も考えている事って殆どありませんもんね。それが夫婦になっても同じ。

入江くんと琴子ちゃんのお話となればこういう考えも浮かぶのに自分に置き換えるとちっとも理解できていない私って・・・。
少し切ないお話でしたが理想的と仰って下さってすごく嬉しかったです。ありがとうございましたm(_ _)m

藤夏さま。

こんにちは☆

拍手コメントありがとうございます♪

今回のお話は今までの作品の中で一番切ないお話だったかもしれません。
入江くんって普段みんなが心配してしまうほど琴子ちゃんに冷たい態度をとりますが、誰よりも一番分かっているんじゃないかと思ったりしています。
琴子ちゃんも不器用ながら出来る限り自分でなんとかしようとする性格ですがだからこそ入江くんはそれを尊重し、最後まで見届け差し伸べる。
そう思うと入江くんの愛情の深さって凄いと思ったりしてます。
って偉そうに語ってしまいましたが・・・(^_^;)
だけど時と場合によるだろー!と説教したくなることもあるわけで(苦笑)
そうですよ!!藤夏さんの仰るとおり、早めのケアをしてあげることに越したことはないんです。
今度当ブログの入江くんに会ったら一言言ってやろうと思います(笑)

今日は

こんばんは、今日は何度も泣いてます。
歳のせいもあるのか、涙腺ゆるゆるで、
またも号泣中です。
琴子、入江君、夫婦の絆・愛・を感じました。

Re: じぇぐんよんさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

大分弱ってる琴子ちゃんと甘めな入江くんでもう原作の形留めてませんが2人の絆を受け取ってくださって嬉しかったです。
拙いお話の中で感動してくださるのはじぇぐんよんさんの感情が豊かで読解力が優れているからこそですね(^^)じぇぐんよんさんの感性に感謝です(^^)
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