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Bitter? or sweet? 

バレンタインですね~。
最近は本命義理だけじゃないんですね~。
今年は初めて娘と友チョコ作り~。
今の子達って大変ですね(^_^;)



さて、我が家のイリコトのバレンタインはどんな感じかな?


(本当は明日更新する予定でしたが内容的に今日の方が良いのかも・・・と思ったので(^_^;) 段取り悪くてスミマセン(大汗))



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 







 昨日の夜の天気予報で珍しく大寒波が関東の方まで覆うらしく夕方には雪が降るという予報がでていた。
 予報通り朝から気温が低く空もどんより厚い雲が覆い今にも雪が降りそうで。
 直樹は少々の雪でも交通機関が混乱してしまうことを予想しいつもより早く大学を出た。





 「ただいま。」
 

 直樹が玄関を開けると迎えてくれたのは琴子、じゃなくて何とも言えない焦げ臭い匂いだった。


 (・・・なんだ?)


 くんくんと匂いを嗅いでその正体を掴もうとするがただ焦げ臭いだけでさっぱり分からない。
 そしてまだまだ新婚で新妻モード全開の琴子だが今日は出迎えてくれる気配もない。
 
 (ま、無理もないか)

 そもそもこの匂いを作り上げているのは他でもない、琴子だから。
 直樹はとりあえず寝室に荷物を置きに2階へ上がり、琴子のコーヒーを飲むために焦げ臭い匂いが充満しているだろうリビングへ向かった。


 
 焦げ臭い匂いが家中に充満していてもきっとそばで紀子が手伝っているから大丈夫だと慌てることはしなかったのだが、リビングを開けた途端に天井に立ちこめる白い煙に直樹は驚いた。 
 一歩間違えれば近所から火事だと通報されてもおかしくない状況に慌ててキッチンへ行くとモクモクと煙を上げているオーブンを前にして琴子が慌てている姿が見えた。


 「琴子!何やってるんだ!!」

 「あぁ!ど、どうしよう!オーブンから煙が!か、火事になっちゃうよ~!!」

 「ったく!どけ!!」


 直樹は涙目でパニックになっている琴子を後ろに引っ張るとオーブンのコンセントを抜き濡れたフキンを掴むとオーブンのドアを開けた。
 むわっと吹き出す煙の中から丸い物体を掴むと投げるようにシンクに放り蛇口を最大にひねる。そして換気扇のスイッチを入れ近くの窓を全開にした。
 

 「おまえ、何やってんだよ!」


 とりあえず落ち着いた後、直樹は琴子を睨んだ。
 琴子は直樹の罵声を気にすることなくただただ悲しげにシンクを眺めていた。


 「・・・あぁ・・・あたしの力作が・・・。」

 「・・・はぁ?」


 力作・・・。あれだけ煙を上げて作り上げられるものとはいったい何だろう・・・。
 火事一歩手前までやっておいてまだそれを名残惜しそうに見ている琴子に直樹は怒鳴ってやりたいと思ったがとりあえず、と一呼吸おいてシンクの中を覗いた。
 そこにあるのは丸い型に入った真っ黒な物体。


 「なんだ?備長炭でも作るのか?」


 琴子の真横に顔を近づけて直樹が呟くと琴子は「ひぃっ」と短い悲鳴を上げた。


 「い、入江くん!!帰ってたの?!」

 「今更だな。誰が助けたと思ってるんだ!」

 「あ、そそうだ、入江くんがいなかったらどうなってたか・・・。あ、それとお出迎え出来なくてごめんね。」

 「・・・別に。で、何を作ってたんだ?本当に備長炭か?」

 
 きっと食べ物に違いないだろうが目の前にある物は見事な出来の炭だ。
 型に入っているのを見るとケーキを作ろうとしていたというのは分かるが何のケーキかは全く分からない。
 カッチカチで光沢さえ出ている黒い物体。
 炭と言われても仕方がない出来だけに琴子も大きく反論も出来ず小さく「違うもん」と口を尖らせた。


 「・・・ョコラ・・・だもん」

 「え?なに?」

 「・・・ガトーショコラ・・・。」

 「・・・。」


 またエライ高度なモノを・・・。
 直樹は大きな溜め息をついた。
 琴子も直樹の心の中が読めたのだろう、むぅっと口を更に尖らせた。


 「だって、入江くんチョコ食べてくれないじゃない。」

 「チョコだけじゃなくて甘いモン自体食わないんだよ、おれは。」

 
 いったい何なんだ?直樹は呟いて思い出す。
 そう言えば明日はバレンタインだったな、と。
 琴子は同居を始めてからずっと毎年母、紀子と気合いを入れて作っている。が、逆に直樹も「そんなの食えるか!」とかわして逃げていた。琴子に加勢してぎゃんぎゃんと抗議をしてくる紀子がうるさくてしつこい時は微量かじるだけ。
 まともに琴子のものを受け取った事はなかった。
 けれど今年はそうはいかない。結婚して初めてのバレンタインで琴子が気合いを入れて作るのも納得がいく。
 けれど大分無謀すぎるだろう。
 チョコを溶かして型に入れる普通のチョコでさえ毎年紀子に手伝って貰いながら苦労して作っているのに、いきなりガトーショコラ。
 しかも今年は紀子のフォローもないようだ。
 そう思うとまた大きな溜め息が零れる。


 「まだおれ病気にはなりたくないんだけど?」

 「・・・ヒ、ヒドイっ」

 「いや、ヒドイのはおまえだろ。おれにこんな炭食わせてどうしたいの。」

 「・・・だから、こうやって練習してるんじゃない~~!!入江くん、いつもチョコ食べてくれないしガトーショコラだったら甘さ控え目で食べられるかも知れないと思って。」

 「・・・気持ちだけ貰っておく。」


 直樹は真っ黒のケーキになり損ねた炭を見ながら溜め息を吐いた。
 そもそもバレンタインだからといって絶対にチョコや甘い物を作らなければならないなんてないのだ。
 某有名お菓子メーカーの策略に思いっきり嵌っているだけ。
 こんなイベントがなくたって琴子の自分への気持ちはちゃんと分かっているつもりだし。
 だからチョコがなくたってその気持ちだけで十分で。
 けれど、琴子は直樹の溜め息の中にそんな思いがあるなんて気付きもしない。
 むしろその溜め息は呆れのようなものが入っていると思った。
 琴子は結婚しても「いらない」と言われた言葉が酷く胸を締め付けた。


 「・・・そう言って他の女の子からのチョコはしっかり貰ってくるんでしょう?」

 「は?」


 いきなり突拍子な身に覚えのない事を言われて直樹は眉間に皺を寄せる。

 
 「入江くんだって男の人だもん。綺麗な人とか可愛い人から渡されると嬉しくて貰っちゃうでしょ??ううん、きっとそうに決まってるもん!!」

 「・・・琴子?」

 「いいもんっ!!入江くんなんかにチョコあげないんだからっ!!毎年食べてくれないんだもん!どうせ作っても入江くんにとったらただのゴミだもんね!!」


 大きな目を真っ赤にしながら直樹を見つめる琴子の目は酷く傷ついた色をしていた。
 直樹はいつものように冗談交じりに言っただけで琴子もいつもの様に軽く受け流すと思っていたのに。なのに今日の琴子はどこか違っていた。
 真剣な目で涙を一杯溜めて睨み付けている。

 
 「・・・琴子?どうした?」


 直樹は零れんばかりの涙を拭おうと触れようとするがすっと顔を背けられてしまう。そして拭えなかった涙がぽたっと床に落ちた。

 
 「・・・らい・・・」 

 「え?」

 「入江くんなんて嫌いっ!!」


 琴子は直樹に言い切ると涙を拭うことなく寝室へ駆け上がっていってしまった。
 琴子の腕を掴もうと伸ばした手は何も掴めずに空気を掻く。
 いつもの軽口であんな状態になってしまった理由が分からなくて直樹はただ琴子が出て行くのを見ることしか出来なかった。



 







 「うわっ何この煙!?ったく毎日毎日勘弁してほしーよな!!」
 
 
 学校から帰ってきた裕樹は出迎えてくれた立ちこめる煙と焦げ臭さに鼻をつまみいかにも迷惑そうな不機嫌な態度で示す。
 まさかキッチンに直樹がいると思っていなかったようで直樹が顔を出すと裕樹はビクッと身体を強張らせた。


 「おかえり。」

 「わっ お、おおおおおお兄ちゃん!帰ってたの?!」

 「雪降る前に・・・な。」

 「そ、そうなんだ・・・」


 その証拠に裕樹の頭にはうっすら雪が積もっていて、予報通り雪が降ってきた事を表していた。
 裕樹はその雪を振り落とそうとすることなくリビングの入り口付近に立ちつくしたままそこから動こうとしない。
 挙動不審な裕樹といつもと様子がちがう琴子。なにか事情があるな、と直樹は推測した。 


 「・・・裕樹。」

 「は、はいっ」


 裕樹の心情を探るかのような直樹の低音の声が部屋に響く。
  
 
 「琴子は毎日やってたのか?」

 「え?何を?」

 「コレ。」

 

 と、部屋に充満しているニオイと煙を指さす。
 けれど裕樹は口籠もったまま。いつもならそれに対して『聞いてよお兄ちゃん!』とこれまでの苦痛を訴えかけて来るのに今日は何か躊躇しているようだ。
  

 「裕樹。おまえ、琴子に何があったか知ってるんだろう?」

 「・・・琴子に口止めされてるんだ。」

 
 夫である直樹よりも琴子と一緒に居る時間がながい裕樹。
 どうやら琴子の事は自分より弟の方が把握しているらしい。復学したばかりでやらなければいけないことが多いから仕方のない事だけれど、でも何か面白くない。
 夫に内緒で義理の兄弟での秘密事があるというのは更に輪をかけて面白くない。


 「裕樹。」

 「・・・僕が話したって琴子には言わないでね。ずっと根に持たれたくないから。」

 「分かってる。」


 裕樹はだんだんと鋭くなっていく兄の視線に怯えつつも「別に大したことじゃないんだけどね。」とポツリと話し始めた。


 


 
 


 



 










 直樹は寝室のドアのノブを静かに手をかける。そしてノブが回ったことにホッと胸を撫で下ろした。
 さっきあんなに泣いて出て行った琴子の事だからもしかして部屋に鍵を掛けて閉じこもってしまったのではないかと思っていた。

 琴子は直樹に向かって『嫌い』と言った。自分に対して『嫌い』と言ったのはあまり記憶にない。もしかして初めてではないだろうかと思う。
 
 直樹は鍵の掛けられていないドアをゆっくりと静かに開け、また静かに閉める。陽も落ちて薄暗い視線の先には大きなベッドに小さな山。どうやら琴子が丸まっているらしい。
 直樹は大きく溜め息をついた。


 「琴子。」

 
 返事はない。


 「・・・琴子、寝てるのか?」


 やっぱり返事はない。
 直樹は足音を立てずにベッドの脇に立つとゆっくり掛け布団を持ち上げる。が、琴子が力いっぱい中から引っ張っているようで持ち上がらなかった。

 これは本格的に怒っている様子。
 直樹は琴子の作る山の傍に腰を下ろすとその山をゆっくりと撫でた。
 何も言わず、ただひたすらゆっくりと撫でた。

















 
 『僕も詳しくは分からないけど、今月になって急に練習し始めたんだ。』


 直樹からタオルを受け取り裕樹は頭を拭きながら話し始めた。


 『何があったかは聞いてないからよく分からないんだけど、大学から帰って来るなり本とにらめっこして急に作り出したんだ。ママが理由を聞いても一人で作りたいって言うだけ。だからここんところ帰ってくるとこの匂いが充満してた。』


 どうやら裕樹も紀子も琴子がこうなった理由を知らないらしい。


 『口止めしてた理由は?』


 裕樹から聞く限りではそんな内緒にするような理由が見つからない。だいたいこれまで毎年のように大っぴらに直樹へのチョコを作ってきたのに。今年は何故か紀子の助けもナシで秘密にしている。
 理解できないでいる直樹に裕樹ははぁ・・・と溜め息をつく。


 『簡単なことだよ、お兄ちゃん。』

 『え?』

 『琴子はただ自分の力で作り上げたものをお兄ちゃんに渡したい、それだけだよ。結婚したんだから堂々とお兄ちゃんに渡せるし。ママの力を借りずに作ってお兄ちゃんを驚かせたかったんだよ。琴子も馬鹿だよな。甘い物嫌いなお兄ちゃんが喜ぶわけないのにっ』

 
















 ――――――――簡単なことだよ、お兄ちゃん。


 裕樹のさらりと言った台詞を思い出しながら直樹は琴子が作っている小さな山を撫でる。
 裕樹が簡単だよと言ったことが直樹は教えて貰わなければ気づけなかった。

 
 (そうだった。俺のために何事も全力突っ走るの事があいつの特技だった。)


 弟に諭されるなんて。何やってるんだろうと直樹は自分を責めた。



 
 「琴子、起きてるか?」


 コンコンと指で合図を送る。返事はしないけどモゾっと布団が動いたから起きてはいるらしい。直樹は琴子の山を優しく撫でた。


 「・・・悪かった。」

 
 やっぱり琴子は返事をしない。


 「裕樹からなんとなく理由はきいたよ。でもおまえ、おれを驚かせるとかだけの理由じゃないだろう・・・?」


 直樹は再びゆっくり掛け布団をめくる。今度は拒まれることなくベッドの中にいた琴子の顔があらわれた。
 ぐしゃぐしゃの顔ではないけれど、泣き続けていたのだろう、暗闇でも分かるほどに潤んでいた。

 直樹と琴子。斗南の名物コンビ。
 端から見れば琴子がひたすら追いかけて飛び込んで、直樹は仕方なく付き合い時には巻き込まれる。 
 大砲のような琴子のアタックに靡くことはないけれどそれを当たり前のようにしっかりと受け止めてきた。
 大多数の人間にはそんな2人を無自覚のバカップルと捉えられていたと思うが人の感性は様々で時には琴子が強引にまとわりついていて直樹が迷惑そうにしてるように捉えられる事あったと思う。
 
 直樹はそんな少数派の人間になにか心ないことを言われたのではないかと推測した。

 昔の自覚のない直樹だったら心ない言葉で落ち込む琴子に皮肉な言葉をぶつけるだけで良かったかもしれない。
 けれど、今は違う。
 誰よりも大事で愛しくてかけがえのない人。
 

 「何言われたのかは言いたくなければ聞かないし、無理に言わなくてもいい。でも前も言ったろ。他の奴の言うことよりも俺だけを信じていればいいって。」

 「・・・。」


 大きく開かれた瞳から滴が零れる。
 涙もろくなっているとはいえ、留まることなく零れていく滴。
 
 直樹は琴子の隣に身体を横たえて何も言わず涙を流す琴子の顔をしっかりと捉えた。
 琴子もまた顔を背けることなく、直樹の顔を見つめる。


 「おれが信用できない?」

 
 甘い言葉も琴子を安心させる言葉も言わないでその質問はないだろう?と身体の中で誰かが問う。
 
 (・・・だよな。)

 その問いかけに直樹は心の中で答える。

 琴子がよく妄想するように優しい言葉をかけてやればいいのかもしれない。
 それは世間的にはとても簡単でこの状況を解決するには一番良い方法なのかもしれない。
 でもそれは不器用な直樹にしてみればとても難しくて、勇気のいることで。
 
 

 直樹はキッチンで触れられなかった大きな瞳にそっと触れる。
 琴子が拒むことなくそれを受け入れてくれたので直樹は自分に引き寄せてぎゅっと抱きしめた。
 
 

 泣かせて悪かった。
 泣かせるつもりなんてなかった。
 おれはおまえの笑顔が好きで、傍にいてくれさえすれば何も要らない。



 心の中で呟きながら涙に濡れた瞼を唇で拭う。
 心の中で囁いたって到底琴子には届かない。けれど言葉にすることも出来ない。
 それでも自分の思いが少しでも琴子に伝わればいいとひたすら愛しい顔にキスを落とした。




 
 「いりえくん・・・。」

 「・・・ん?」


 直樹は漸く口を開いた琴子の前髪をかき上げるとあらわになった丸い額に優しいキスを落とす。
 するとくすぐったそうな声を漏らした。



 「あたし、入江くんの事、信じてるよ。雨の日に言ってくれた事だって忘れたことなんてない。」

 

 ――――――――おれ以外の男、好きだなんて言うな。 



 直樹にとって一世一代の告白。琴子にとっても忘れられない特別な言葉。
  

 「知ってる。」

 「それから、ごめんなさい。」


 琴子はおさまっていた涙をまた零し始める。

 
 「なにが。」

 「入江くんのこと、嫌いって・・・さっき・・・。」
  
 「あぁ。初めて琴子から聞いたかもな。」

 「・・・ごめんなさい。大好きなのに嫌いって言っちゃって。あたし、入江くんが大好きで仕方がないの。」

 
 直樹は思わず笑ってしまった。
 琴子の「嫌い」は直樹の意地悪からその場の勢いで言ったと分かっている。
 そもそもそうさせたのは直樹本人であって、それに対して傷ついたのならば自業自得というやつだ。 
 琴子に非なんてない。
 なのに琴子は自分が「嫌い」と言ってしまったことを酷く後悔をしていて涙を流しながら謝る。


 「そんなこと言わなくても分かってる・・・ぶっ・・・」

 「な、なんで笑うの?!」

 「い、いや別に・・・ぶぶっ・・・」

 「ひ、ひどい!!あたし、入江くんを傷つけちゃったと思って心配してっ・・・う゛っ」


 ぎゅうっ!
 直樹は力いっぱい琴子を抱きしめた。
 これでもかというくらい腕に力をこめて。

 
 「ぐ・・・ぐるじ・・・い゛り゛ぇ゛・・・ぐ・・・」

 
 直樹の背中に回された琴子の小さな手がバンバンと大きな背中を叩く。
 けれど直樹は力を緩めなかった。




 心の中からあふれ出てくる琴子への愛情。
 それが自分の中から出てくるなんて、なんだか信じられなくて、くすぐったくて、幸せで。
 そんなもどかしいような思いが琴子を抱く腕に力が加わる。






 (おまえって本当に凄い奴)






 寝技とも取れる直樹の愛の籠もったハグに琴子はがくりと力を落とした。
 強烈なハグだったので思うように力が入らないらしい。

 直樹はぐったりした琴子を胸の上に抱えた。
 そして今度は優しく抱きしめる。


 「楽しみにしてるよ、明日。」

 「え?」

 「今までお前のいろんな料理を口にしてきたけど、でも備長炭だけは勘弁な。」

 「・・・うん。頑張る・・・だから受け取ってね。」

 
 真上にある琴子の額にキス。
 そして唇にもキス。

 2人は顔を見合わせてくすぐったそうに笑いながらまたキスをした。




















 ――――――――で、翌日。






 「なんだコレは・・・」


 真っ黒で硬そうで黒光りしている丸い物体。
 大学から帰宅してきた直樹の前にコーヒーと共に並べられた。


 「ガ、ガトーショコラでぇす。」

 「なんでホールで出てんの?」

 
 カットされることなくどっかりと居座っている物体。
 答えは分かっている。
 見るからにして硬そうだからナイフが入らなかったに違いない。
 

 「・・・備長炭はいらないって言ったよな。」

 「・・・ち、違うよ。入江くんの前で切りたてを出してあげたかったの!」


 そういって琴子はケーキ用のナイフを手に取った。


 ガリっ・・・ザク・・・ザクザク・・・



 ガトーショコラには似合わない音を立てて切られていく。切られる度に削られていく細かい粉を見ながら直樹は大きな溜め息をついた。


 「・・・やっぱりコーヒーだけでいい。」

 「そ、そんな~。」

 「じゃあ、おまえも一緒に食えよ。」

 「え゛・・・あたしは・・・もうお腹いっぱいかな~・・・なんて。」


 えへへ・・・と目を泳がせる琴子に直樹の額にぴしっと血管が浮かび上がる。


 「・・・おまえ・・・

 「あ、あはは~・・・」


 琴子はひょい・・・と直樹から視線を外した。


 「自分が食えないもんをおれに食わすんじゃねぇ!!」

 「うわ~~ん!悪気はないんですぅ~~」


 リビングに直樹の大きな雷が落ちる。




 昨日の甘いような切ないような一時はどこへやら。


 新婚なのに甘くない?でも直樹と琴子の夫婦らしいバレンタインは過ぎていくのでした。





              《おしまい♪》


 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 バレンタインなのに甘くない?!
 あまあまを期待していた方、ごめんなさい!!  

 
 



 
 

 

 
 

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こんばんわ

バレンタインのお話読ませてもらいましたがちょっと残念‥全部読めませんでした(>_<)携帯だから‥これからもお話楽しみにしています。たくさん書いてくださいね

ハードル高いよ^^

おはようございます。更新ありがとうございます。

琴子ちゃんて可哀想なぐらいバレンタインにいい思い出ないですよね。入江くんも甘いの嫌いもあるけどツンが際立つから。
ガトーショコラとは琴子ちゃんは普通のチョコ作りも大変なのにエラくハードルあげちゃいましたね(笑) レシピを読むと簡単そうだけど結構面倒くさい。入江くんに精一杯愛を伝えたいのね。
入江くん、琴子ちゃんは入江くんのことには特に一生懸命頑張るんだからあんまりからかわないでね。
しかし備長炭…そして自分は食べようとしない琴子ちゃんて最高だわ!

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備長炭って表現に笑いました(爆)
自分が不器用なの知ってても、大好きな入江くんに自分の力で作ったチョコを渡したくて、何故か炭化させちゃう琴子ちゃん!!可愛い(^w^)
甘いもん嫌いの愛想なしの入江くんへのプレゼントだからこその手作り、例え炭でも愛はこもってますよね(笑)

わたくしもいつも携帯から拝読しています。今回ご配慮ありがとうございました。最後まで読めて嬉しかったです(^^)


バレンタイン…ムスコばかりの我が家はみんなちゃんと貰えたかしらと毎年コッソリ心配とかしてます(笑)

あとオットに昔、買ったやつの方が美味いと言われムカついて教室に通って免状取ってやりました(^^)どこまで負けず嫌いなんでしょね、自分(笑)
今では作るとドヤ顔で渡してます(爆)

Re: ぴくもんさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

最初は切なくラストはラブラブなお話になる予定だったんですよ(^_^;)
けれど書いてるウチにあれ?って(^_^;)
でもこれはこれでイリコトらしいなって思ったりしたので結構気に入ってたりもします。

そして一緒に住み始めてから入江くんよりもずっと琴子ちゃんと一緒に居る時間が長い裕樹くん。
どんなに文句や毒舌を吐いたとしても琴子ちゃんの良き理解者で味方であると思います。
時には入江くんを諭してくれたり琴子ちゃんを助けてあげたりととってもナイスな弟くん♪
そして入江家の中で一番の苦労人(笑)一番若いのに・・・(^_^;)

入江くんのツン度ももっと上げたいのに脳みそが常に沸いちゃってる私にはコレが限度・・・。
MAXの強烈ハグは私の完全妄想暴走です。
なのでそこが良いと仰ってくださってとっても嬉しいです♪
あの炭ケーキは何処行ったんでしょうね・・・もう防臭剤としか使い道ないほどの焦げ具合なので下駄箱でニオイ取りとして活躍中ですかね・・・備長炭だし・・・(^_^;)
でも入江くんの靴が入ってる下駄箱が臭うというのもあまり想像したくないですけどね・・・(爆)

ぴくもんさんの仰るとおり、甘い物がなくたってこの2人はらぶらぶですからチョコが失敗しようともそんなの何の支障もありませんよね(*^_^*)

Re: Wankoさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

今回途中までしか見られなかったということで、後に更新した記事と繋がりましたでしょうか?
私は完全PCで管理していますので携帯からは見たことがないので指摘を頂くまで気付きませんでした。

まだ対処方法も分からないのでご迷惑をおかけしますがこれからもよろしくお願いします(*^_^*)
また、遊びに来てくださいね♪

Re: 紀子ママさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

結婚してもまだ一波乱起きてしまうバレンタイン・・・。
入江くんも結婚したからって素直に受け取ってくれなさそうですし、琴子ちゃんも妄想炸裂で頑張りすぎて空回りしていそうで(^_^;)
結婚して最初のバレンタインに気合いを入れるなと琴子ちゃんに言う方が間違ってますよね。
大好きな入江くんに堂々と渡せるんですもん♪気合いの入れ方もちがうってもんです(^_^)
確かにガトーショコラって難易度高そう・・・作ったことないんですよ・・・私(大汗)
そして備長炭になったガトーショコラを手に愛を伝える琴子ちゃん。
けれど自己防衛機能はしっかり備わっていて決して自分で食べようとはしないという・・・(笑)
入江くんは琴子ちゃんがもうスイーツみたいなもんですから備長炭食わせようとしたお仕置きとか言って好き勝手すそうですね♪些細なきっかけも見逃さず、しっかり召し上がったことでしょうね(*^m^*)♪

そして『携帯~』の記事にもコメントありがとうございました。
紀子ママさんも携帯から遊びにきてくださっているのですね!ご報告ありがとうございました(^_^)
本当になんでしょうね?
また何かありましたらアドバイスの程よろしくお願いしますm(_ _)m 

Re: あやみくママさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪
そして『携帯~』の記事にも報告ありがとうございました♪

全部お届け出来て良かったです♪
そしていろんなアドバイスありがとうございました(^_^)
その方法は私もさっぱり分からないです(>_<)せっかく教えてくださったのにぃ(涙)
これからも何かありましたら教えてくださいね(^_^)

お話のラストは甘甘でなくって入江くんの雷で終わっちゃったんです~(>_<)!!
なんだかんだ琴子ちゃんに甘い入江くんも備長炭だけは食えねぇと(笑)

それにしても某CMのように全身チョココーティングって!!(爆)入江くん大喜びじゃないですか!!
しかもママもノリノリで協力を惜しまなそう(*^m^*)!!

ママ:「琴子ちゃん!!ムッツリな変態お兄ちゃんに喜んで貰うためにはこれくらい大胆でもおかしくないわよ!!」

琴子:「そ、そそそそそんなっ!無理ですぅ!(←変態発言は否定せず)」

ママ:「駄目よ!そんな弱気になってちゃ! あぁん!!どうして今まで気付かなかったのかしら!こんなベストなナイスな方法を!!」

琴子:「・・・・・・(もう何も言えない///)」


私の方こそ脳みそワキワキです(-_-)入江くんなら自分で琴子ちゃんに塗って召し上がりそうな気もしなくもないんですけどね・・・。かなり重症な私でスミマセン(^_^;)

Re: ちぇるしぃさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

同じ炭を作るならそこは上級品の備長炭にしてあげようと管理人からのプレゼントです(笑)
・・・入江くんにばれたら命ナイかも(-_-)
途中までは自分に対して一生懸命作る琴子ちゃんの気持ちを尊重し少し歩み寄った入江くんでしたが全く進歩しない琴子ちゃんに最後は雷・・・。
琴子ちゃんの愛は伝わっています・・・よね??

そして、ちぇるしぃさん凄いですね!!免状って!!カッコイイです~(>▽<)!!
ウチの旦那は入江くん同様甘い物×なんで今年は某お料理アプリでサツマイモのプリンケーキを作って渡しました(^_^)如何に簡単で美味しく出来るかが私のモットーなもので(^_^;)
旦那のケーキより子供の友チョコの方が大変で肩こり悪化ですよ・・・。
ほんと今の子は大変ですね・・・。

さささま。

こんにちは☆

拍手コメントありがとうございます♪

はじめまして(^_^)
『ハピ☆スマ』へようこそ~♪
管理人大暴走のブログですけれどこれからもどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

甘いお話とは言えませんが楽しんで頂けたようでとても嬉しいです♪
来てくださる皆様は本当にお優しい方ばかり(涙)
そんな皆様の優しさに日々、甘えさせていただいてます(*^_^*)

これからも更新していけるように頑張りますので、また遊びにきてくださいね(^_^)

にゃっ太さま。

こんにちは☆

拍手コメントありがとうございます♪

そんな恐れ多い~(>_<)
素敵なコメントありがとうございました♪
なかなかそんなコメント頂けないので本当に嬉しいです♪
またコメント頂けるように精進したいと思います(^_^)

『携帯~』の記事にコメントをくださった方。

コメント欄を閉じているのにもかかわらずご丁寧にコメントをくださりありがとうございました♪

☆:無記名さま。
  (02/15 21:45に拍手コメントくださった方)

ご報告ありがとうございます。
この記事を目にしてくださった方からいろんなご意見を頂きました。
携帯によって見られる、見られないがあるようでビックリしました。
そんな理由もあったりするのですね(^_^)
無記名さまは全部読むことが出来たとのことで良かったです。
今後の更新において何かありましたらまた教えてくださいね♪

そして『IF』も読んで下さっているなんてっ!!
ありがとうございます♪
先週末に久々更新しましたので、まだ読んでいらっしゃらなければどうぞお立ち寄り下さい♪
なかなか更新できなくて申し訳ありませんがそちらの方もどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

ツンデレの本質(笑)

narack様
御無沙汰してしまいました。久々に御邪魔して楽しませて頂きました♪バレンタインの可愛いお話を有難うございました。琴子ちゃんが健気で可愛いですよねえ~。直樹もそんな琴子が本当は気になってしょうがないんだろうなあと思います。
直樹の口の悪さはツンの典型だけど、ただイジワルなんじゃなくて、やっぱり根底には琴子が好きだから、その反応を観たくて、つい必要以上にからかってしまったりってところも多分にある気がします。だから今回みたいに琴子が予想外の反応したりすると、ツンのままではいられなくなって…よーするに、直樹がツンデレ全開で俺様で居られるのも琴子ちゃんの深い愛情と広い度量のお蔭だって思い知らされるのよねえ。裕樹君の一言が凄く深いですよねえ。さすが兄弟!
直樹のツンにやられっぱなしの琴子じゃなくて、しっかりやり返してこその夫婦って感じも凄く好きなので、最後のシーンは拍手喝采でした!うふふ。やっぱり琴子はこうでなくっちゃ(笑)
お忙しいと思いますが、どうぞこれからもマイペースで更新続けて下さいね。また楽しみに御邪魔します。有難うございました。

Re: ひろりんさま。

こんにちは☆

コメントありがとうございます♪

もう、ひろりんさんの仰るとおりで(^_^)
入江くんがそれだけ好き勝手言えるのは琴子ちゃんの広い心と深い愛情のおかげです!!
こんな偏屈な男、誰も受け入れませんよねぇ?!たまには琴子ちゃんの有り難みを思い知りなさい!と思いながら書きました(^_^;)そして結果的にも琴子ちゃんに振り回されるという・・・。でもそれが入江くんの真の幸せなのだと信じております(え?違う?)
裕樹くんは琴子ちゃんに対して文句や意地悪を言いますが、でも琴子ちゃんの味方で理解者で。とても素敵な義弟です♪裕樹くんが居なかったらこの夫婦も成り立たなかったかもしれませんし。それ程に大事な存在ですね(^_^)

次も一応用意してますので(その先は真っ白)卒業式の季節にまた覗きに来てくださいね(*^_^*)
プロフィール

narack

Author:narack
☆いらっしゃいませ☆
 こちらは「イタズラなkiss」の二次創作と管理人の好きな物etcをつぶやくblogです。

 イタズラなkissに関しましては管理人の勝手な想像、妄想によるものですので二次世界が苦手な方はご遠慮ください。
 また、作者様、出版社様、その他関係者様とは一切関係ありません。

 管理人の創作で少しでも笑顔になれたら嬉しいです。
 皆様がHAPPYになりますように。

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